産休中に有給休暇は使える?|産前は請求前なら可・産後8週は就業禁止(労基法39条・65条)

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

産前休業は本人の請求で始まる休業で、請求しない間は通常の労働日なので、年次有給休暇を使えます。産後8週間は労働基準法65条が就業を禁じる期間です。産前産後に休業した期間は、年休の出勤率の算定では出勤したものとみなされます(同法39条10項)。産前に年休を使う日は賃金が出るため、出産手当金は調整の対象になり得ます(健康保険法108条2項)。産休に入る前の年休の使い方と、休業中の扱いを整理します。

結論:年休が使えるのは産前休業を請求する前、休業中は出勤扱いで年休は減らない

産休と年次有給休暇の関係は、時期によって扱いが分かれます。条文と厚生労働省の資料で確認できる範囲を表にしました。

時期扱い根拠
産前休業を請求する前通常の労働日なので、年休を請求できる労働基準法39条5項
産前休業の請求後使用者は就業させてはならない同法65条1項
産後8週間就業させてはならない(産後6週を過ぎた後の例外あり)同法65条2項
年休の出勤率の算定産前産後に休業した期間は、出勤したものとみなす同法39条10項

産前休業の請求後と産後休業中に年休をどう扱うかを、産休について直接書いた厚生労働省の通達は、確認した範囲では見当たりませんでした。育児休業については通達があり、後の節で紹介します。

産前休業は請求制、産後休業は就業禁止

労働基準法65条は、産前と産後で性質の違う2つの定めを置いています。

  • 産前:6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、使用者はその者を就業させてはならない
  • 産後:産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない

厚生労働省の母性健康管理サイトも、産前休業は請求すれば取得でき、産後は出産日の翌日から8週間は就業できないと説明しています。このサイトには、年次有給休暇についての記載は見当たりません。日数の数え方は産休はいつから?で整理しています。

産前休業に入る前は、通常どおり年休を請求できる

産前休業は請求して初めて始まります。請求していない期間は通常の労働日なので、年休の要件を満たしていれば、労働基準法39条5項により、使用者は労働者が請求する時季に年休を与えなければなりません。ただし、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に与えることができます。

産休に入る前に年休を使う場合は、次の点を決めておくと進めやすくなります。

  • 産前休業の開始日(出産予定日から数えた日付)
  • 残っている年休の日数
  • 年休を使う日が、産前休業の開始日より前に収まっているか

年休を産前休業の期間に充てられるかどうかは、会社の取扱いで変わる可能性があります。就業規則を確認し、人事・労務の担当に聞いてください。

育児休業の通達が示す考え方

厚生労働省の通達「育児休業制度の労働基準法上の取扱いについて」(平成3年12月20日基発第712号)は、年次有給休暇について次の考え方を示しています。

  • 年休は労働義務のある日についてのみ請求できる。そのため、育児休業の申出後は、育児休業期間中の日について年休を請求する余地はない
  • 育児休業の申出前に、休業期間中の日について時季指定や計画付与が行われていた場合は、その日に年休を取得したものとみなされ、事業主はその日の賃金を支払う義務が生じる

この通達は育児休業についてのものです。産前産後休業について同じことを書いた通達は、確認した範囲では見当たりません。産後8週間は法律上就業させてはならない期間なので、年休を充てられるかどうかは、会社の取扱いも含めて確認してください。育休の期間と延長は育休はいつまで取れるかで解説しています。

産休・育休の期間は、年休の出勤率では出勤扱い

年休が発生する条件には、全労働日の8割以上出勤することがあります(39条1項)。労働基準法39条10項は、次の期間を出勤したものとみなすと定めています。

  • 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
  • 育児休業・介護休業をした期間
  • 産前産後の女性が65条の規定によって休業した期間

厚生労働省の鹿児島労働局のQ&Aも、産前産後の休業や育児休業を欠勤扱いにはできないと説明しています。休業したことだけを理由に、年休の出勤率で不利に扱われることはありません。

産前に年休を使う日は、出産手当金との調整に注意

出産手当金は、産前産後の休業中に報酬が出ない人のための給付です。健康保険法108条2項は、出産した場合に報酬の全部または一部を受けることができる人には、受けることができる期間は出産手当金を支給しないと定めています。ただし、受けることができる報酬の額が出産手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます。

年休を使った日は、労働基準法39条9項により賃金が支払われます。産前休業の期間に年休で賃金を受ける日があれば、その日は出産手当金が調整される可能性があります。年休の賃金が調整の対象になるかを名指しした条文は、確認した範囲では見当たりません。実際の扱いは、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に確認するのが確実です。

出産手当金の仕組みと申請は出産手当金で説明しています。

迷ったときの相談先

年休の取扱いは、まず会社の就業規則と人事・労務の担当で確認します。会社の対応に疑問があるときは、都道府県労働局や労働基準監督署に相談できます。産休中・育休中の社会保険料や税金は産休・育休中の社会保険料と税金、給付金は育児休業給付金を参考にしてください。

よくある質問

産休に入る前に年休を使えますか?
産前休業を請求する前の期間は通常の労働日なので、年休の要件を満たしていれば請求できます(労働基準法39条5項)。事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に与えられることがあります。
産後休業中に有給休暇を使えますか?
労働基準法65条2項は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならないと定めています。産後休業に年休を充てられるかを直接書いた通達は、確認した範囲では見当たりません。会社の取扱いを人事・労務の担当に確認してください。
産休で休んだ期間は、年休の出勤率でどう扱われますか?
労働基準法39条10項により、産前産後の女性が65条の規定によって休業した期間は、出勤したものとみなされます。
育休中に年休を請求できますか?
厚生労働省の通達(平成3年12月20日基発第712号)は、年休は労働義務のある日にのみ請求できるため、育児休業の申出後は休業期間中の日について年休を請求する余地はないとしています。
産前に年休を使うと、出産手当金はどうなりますか?
健康保険法108条2項により、報酬を受けることができる期間は出産手当金が支給されず、報酬が手当金の額より少ないときは差額が支給されます。年休の賃金が調整の対象になるかは、加入先の健康保険に確認してください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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