予防接種は医療費控除の対象になる?|対象外だが「取組」にはなる

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

予防接種の費用は、治療ではなく予防が目的のため、原則として医療費控除の対象になりません。一方でセルフメディケーション税制では、予防接種を受けたことが適用の前提となる「一定の取組」に含まれます。ただし取組にかかった費用そのものは控除されません。この紛らわしい関係を国税庁の資料にもとづいて整理します。

結論:予防接種の費用は医療費控除の対象外

医療費控除は治療にかかった費用を対象とする制度です。国税庁の説明では、「ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません」とされ、「健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません」と明記されています。

予防接種は病気にかからないようにするための接種であり、予防が目的なので、この考え方では医療費控除の対象になりません。インフルエンザの予防接種も、子どもの定期接種・任意接種も同じ整理になります。

なお定期接種は、そもそも市町村が費用を負担するため自己負担なしで受けられるのが一般的です。費用の仕組みは子どもの予防接種の費用で整理しています。

ただしセルフメディケーション税制では「取組」に該当する

ここが紛らわしいところです。医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制を使うには、その年に「健康の保持増進および疾病の予防への一定の取組」を行っていることが条件になります。

国税庁が挙げている一定の取組は次の6つで、予防接種が明確に含まれています

  • 健康保険組合などが実施する健康診査
  • 市区町村が実施する健康診査
  • 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
  • 勤務先で実施する定期健康診断
  • 特定健康診査・特定保健指導
  • 市町村が実施するがん検診

つまり予防接種を受けたことは、この税制を使うための「入場券」になります。

「取組」に該当しても、その費用は控除されない

ここを取り違えると計算が合わなくなります。国税庁は「一定の取組(人間ドックなど)に要した費用は、セルフメディケーション税制による医療費控除の対象となりません」と明記しています。

扱い
予防接種を受けたという事実適用条件である「一定の取組」に該当する
予防接種にかかった費用控除額には含まれない
控除の対象になるもの特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品等)の購入費

国税庁の説明では、特定一般用医薬品等購入費とは「医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)等の購入費」とされています。

整理すると

予防接種と控除の関係は、次の3行に集約できます。

  • 予防接種の費用は、通常の医療費控除でもセルフメディケーション税制でも控除されない
  • ただし予防接種を受けたことは、セルフメディケーション税制を使うための条件を満たす
  • その税制で控除できるのは、対象の市販薬を買った費用

なお医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方しか選べません。どちらが有利かはその年の支出によって変わります。

この記事は制度の枠組みを整理するものです。個別の申告における可否や金額の判断は行いません。実際の申告は、国税庁の資料と所轄の税務署でご確認ください。

出産・妊婦健診との違い

同じ「健診・接種」でも、妊娠出産まわりは扱いが変わるものがあります。妊婦健診や出産費用については、治療にあたるかどうかで整理が分かれ、出産育児一時金を差し引いて計算する必要もあります。

こちらは出産・妊婦健診の医療費控除で別途整理しました。「予防のための接種」と「出産に伴う費用」は別の枠組みで考えるのが基本です。

領収書と記録の残し方

セルフメディケーション税制を使う場合、一定の取組を行ったことを明らかにする書類を保存しておく必要があります。予防接種であれば、領収書や予防接種済証などが該当します。

子どもの定期接種は自己負担なしで受けることが多く領収書が出ないこともあるため、母子健康手帳の接種記録が実施の記録として重要になります。接種の記録が一か所にまとまるよう、かかりつけを決めておくと管理しやすくなります(かかりつけの小児科の決め方)。

必要な書類の詳細は、国税庁の該当ページで最新の案内をご確認ください。

よくある質問

予防接種の費用は医療費控除の対象になりますか?
予防が目的のため、原則として対象になりません。国税庁は健康診断の費用や、病気の予防・健康増進のための医薬品の購入代金は医療費に含まれないとしています。
インフルエンザの予防接種はどうですか?
同じく予防目的の接種なので、費用は医療費控除の対象になりません。ただしセルフメディケーション税制の「一定の取組」には、インフルエンザワクチンの予防接種が明記されています。
セルフメディケーション税制では予防接種代を控除できますか?
できません。国税庁は、一定の取組に要した費用はセルフメディケーション税制による医療費控除の対象とならないと明記しています。控除の対象はスイッチOTC医薬品等の購入費です。
では予防接種を受ける意味は何ですか(税制上)。
セルフメディケーション税制を使うには、その年に一定の取組を行っていることが条件です。予防接種はその取組の一つに該当するため、税制を利用するための要件を満たすことになります。
医療費控除とセルフメディケーション税制は両方使えますか?
どちらか一方の選択となります。その年の支出内容によって有利なほうが変わります。
子どもの定期接種は領収書が出ませんでした。
定期接種は自己負担なしで受けることが多く領収書が出ない場合があります。予防接種済証や母子健康手帳の接種記録が実施の記録になります。必要書類は国税庁の案内でご確認ください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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