帝王切開など異常分娩は高額療養費の対象|出産育児一時金との併用と2026年8月の新上限額
帝王切開や切迫早産の入院など保険診療になる部分は高額療養費の対象で、正常分娩は対象外です。出産育児一時金(原則50万円)は対象の費用が別なので併用できます。帝王切開術の点数、2026年8月から見直された上限額、マイナ保険証での窓口負担の抑え方を整理しました。
執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超えるときに、確定申告をすると所得税の負担が軽くなる仕組みです。自分の分だけでなく、生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費も合算できます。
正常な経過の分娩は公的医療保険の対象外ですが、医療費控除は税の制度なので考え方が別です。妊婦健診や分娩・入院の費用は、保険がきかなくても医療費控除の対象になります。
妊娠・出産の年は、健診の積み重ねと分娩・入院費でまとまった支出になりやすく、控除を受けられる可能性が高い年です。対象になる費用とならない費用を先に整理しておきましょう。
国税庁のタックスアンサーでは、出産に関して次のような費用が医療費控除の対象として示されています。
通院費用は領収書が出ないことが多いため、日付・区間・金額を家計簿などに記録しておけば認められます。なお、妊婦健診で受診票(補助券)により公費負担された分は自分で支払っていないため、対象になるのは自己負担した部分です。健診費用の仕組みは妊婦健診の費用で整理しています。
一方、次の費用は対象にならないとされています。
「診療や分娩に直接必要な支出かどうか」が線引きの目安です。判断に迷う費用があるときは、領収書を残したうえで税務署に確認するのが確実です。
医療費控除の額は、次の式で計算します(最高200万円)。
支払った医療費の合計 − 保険金などで補填される金額 − 10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)
ここで重要なのが「保険金などで補填される金額」です。国税庁は例として、出産育児一時金や高額療養費、生命保険契約の入院給付金などを挙げています。出産育児一時金(原則50万円)を受け取った場合は、出産費用からその分を差し引いて計算します。帝王切開などで高額療養費の払い戻しを受けた場合も同じです。
一方、出産手当金は医療費を補填する性格のものではないため、差し引く必要はありません。また、補填される金額がその医療費を上回っても、引ききれない分を他の医療費から差し引く必要はありません。差し引くのは「その給付の目的となった医療費」が限度とされています。
医療費控除は年末調整では受けられないため、会社員でも確定申告が必要です。流れは次のとおりです。
領収書そのものの提出は不要ですが、確定申告期限から5年間は自宅で保存し、求められたら提示できるようにしておきます。
医療費控除は「支払った年」で判定します。年末に入院して年明けに出産した場合は、それぞれの年に支払った額で別々に計算します。
迷いやすいのは次のような点です。
制度の細部は国税庁タックスアンサー(No.1120・No.1122・No.1124)に整理されています。最終的な判断に迷う場合は税務署にご相談ください。
なお、子どもの予防接種の費用は医療費控除の対象になりません。病気の治療ではなく予防のための費用にあたるためです。この扱いは予防接種は医療費控除の対象になる?で詳しく扱っています。妊婦健診そのものの回数と時期は妊婦健診は何回受ける?をご覧ください。
本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。
帝王切開や切迫早産の入院など保険診療になる部分は高額療養費の対象で、正常分娩は対象外です。出産育児一時金(原則50万円)は対象の費用が別なので併用できます。帝王切開術の点数、2026年8月から見直された上限額、マイナ保険証での窓口負担の抑え方を整理しました。
出産育児一時金は原則50万円が支給される制度です。直接支払制度で窓口負担を減らす仕組み、費用が50万円を下回った場合の差額の受け取り方、対象になる出産の範囲、退職後や扶養に入っている場合の申請先を整理しました。
妊婦健診は保険適用外ですが、自治体から交付される補助券で費用の大部分をまかなえます。標準的な14回の健診スケジュール、補助券で足りない場合の自己負担、里帰り出産や引っ越しのときの手続きを整理しました。
予防接種の費用は、予防が目的のため原則として医療費控除の対象になりません。ただしセルフメディケーション税制では、予防接種を受けたこと自体が適用条件の「一定の取組」に該当します。費用は対象外というねじれを国税庁の資料で整理しました。
妊婦健診の回数と間隔は、厚生労働省告示「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」に示されています。妊娠初期から23週までは4週に1回、24〜35週は2週に1回、36週から出産までは1週に1回で、出産までに14回程度。費用負担と里帰りの扱いまで条文にもとづいて整理しました。