無痛分娩ができる施設が見つからないとき|3つの現実的な選択肢

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

無痛分娩を希望しても、通える範囲に対応している施設がないことがあります。実施率は都道府県で4倍近い差があり、これは希望の差ではなく体制の差です。この記事では、対応施設が見つからない場合に取りうる選択肢を3つ整理し、それぞれで確認しておくべきことをまとめます。医学的な判断は必ず受診先の医師にご相談ください。

見つからないのは珍しいことではない

無痛分娩の実施率は、全国で13.8%(2023年・厚生労働省 医療施設調査)。最も高い東京都で24.9%ですが、1割に満たない県も複数あり、その差は4倍近くあります。

東京都の調査(回答11,364人)では、無痛分娩を希望した人が63.9%だったのに対し、実際にできたのは35.8%でした。さらに「希望しなかった」と答えた人のうち17.2%は、予定していた施設が無痛分娩を行っていなかったと回答しています。

つまり希望しても対応施設が見つからないという状況は、決して珍しくありません。まずそのことを知っておくだけでも、判断がしやすくなります。都道府県別の実施率は無痛分娩の割合は13.8%で整理しています。

なぜ対応できる施設が限られるのか

無痛分娩には、麻酔を担当できる医師と、緊急時に対応できる体制が必要です。これは施設の人員配置に直結します。

当サイトが厚生労働省「出産なび」の掲載情報を全件集計したところ、分娩を取り扱う施設のうち産科医が1人以下の施設が22.3%(367施設)、年間分娩件数が200件以下の施設が39.5%(734施設)を占めていました。

小規模な体制で分娩を担っている施設が全国に多く存在します。そこに24時間対応の無痛分娩を求めるのは容易ではありません。対応していないのは施設の姿勢の問題ではなく、体制の問題である場合がほとんどです。詳しい集計は出産環境白書2026に掲載しています。

選択肢1:条件を広げて探し直す

「対応施設がない」と判断する前に、探し方を広げてみる価値はあります。

  • 隣接する市区町村まで範囲を広げる — 当サイトの都道府県ページでは市区町村ごとに施設を確認できます
  • 計画無痛分娩なら対応している施設を探す — 24時間対応は難しくても、日程を決めた形なら対応する施設があります(計画無痛分娩の流れ
  • 公開情報が古い可能性を確認する — 新たに対応を始めた施設が、まだ情報を更新していないことがあります。電話で直接聞くと状況がわかります

ただし範囲を広げる場合は、通院の負担を必ず計算に入れてください。妊婦健診は後期には週1回になり、陣痛が来てからの移動もあります。施設選択の理由の1位が距離・通いやすさ(75%以上)であるのは、この負担が現実的だからです。

選択肢2:里帰り先で対応施設を探す

里帰り出産を予定している場合、里帰り先で対応施設を探す方法があります。里帰りは全国的に4〜5割という調査結果があり、珍しい選択ではありません。

この場合に確認すべきことは次のとおりです。

  • 里帰り先の施設が無痛分娩に対応しているか、その運用(計画か随時か、初産の可否)
  • 受け入れの締切(妊娠○週までに一度受診、という条件がある施設があります
  • 健診の補助券が使えるか、使えない場合の払い戻し手続き(妊婦健診の費用と補助券
  • いま通っている施設からの紹介状の準備

里帰り出産全体の流れは里帰り出産の準備と手続きで整理しています。受け入れ条件の確認は早いほどよいので、里帰りの可能性がある段階で候補先に電話しておくことをおすすめします。

選択肢3:無痛分娩以外の方法を含めて相談する

対応施設が現実的に見つからない場合、痛みへの不安そのものを施設に相談するという方法があります。

無痛分娩を希望する理由は人によって異なります。痛みへの恐怖、過去の出産の経験、体力面の不安など、背景はさまざまです。その背景を伝えれば、施設側が別の形で対応を考えられることがあります。

相談する際は、次のように具体的に伝えると話が進みやすくなります。

痛みへの不安が強く、無痛分娩を考えていました。こちらでは難しいと伺いましたが、他にできることはありますか。

バースプランに書く欄があれば、そこに記入して相談のきっかけにすることもできます(バースプランの書き方)。何ができるかは医学的な判断を含むため、必ず受診先の医師・助産師にご相談ください。

判断は早いほど選択肢が残る

どの選択肢を取るにしても、動くのが早いほど選べる範囲が広がります

分娩予約は約3分の2の人が妊娠3か月(11週)までに終えており、その後に施設を変更した人は約7%です。無痛分娩に対応している施設は数が限られるぶん、予約が早く埋まることもあります

妊娠がわかった段階で、次の3つだけでも確認しておくと後の判断が楽になります。

  1. 通える範囲に無痛分娩の対応施設があるか(全国の産婦人科を都道府県から探す
  2. ある場合、その施設の運用(計画か随時か、初産の可否、追加費用)
  3. ない場合、里帰りの可能性があるか

分娩予約の時期については分娩予約はいつまでにをご覧ください。

よくある質問

無痛分娩に対応している施設はどこで探せますか?
厚生労働省「出産なび」に施設ごとの情報が掲載されています。当サイトの都道府県ページからも地域の分娩取扱施設を確認できます。ただし公開情報が最新とは限らないため、電話での確認をおすすめします。
初産では対応していないと言われました。
施設の方針によるもので、医学的に一律で不可とされているわけではありません。初産でも対応している施設は多くあります。他の施設にも問い合わせてみてください。
遠い施設を選ぶべきか迷っています。
妊婦健診は後期には週1回になり、陣痛が来てからの移動もあります。通院の負担は妊娠期間を通じて続くため、距離と希望のどちらを優先するかは慎重に考えてください。健診は近くで受けられる仕組みがないかも確認する価値があります。
途中から無痛分娩ができる施設に移れますか?
転院自体は可能ですが、転院先に分娩の空きがあるか、健診の記録の引き継ぎが必要かなどの確認事項があります。まずは現在通っている施設に相談してください。
対応施設は今後増えますか?
実施率は2020年8.6%から2023年13.8%へ増えています。ただし麻酔を担当できる医師の配置に左右されるため、地域によって進み方は異なります。将来を断定することはできません。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

あわせて読みたい

無痛分娩の割合は13.8%|都道府県で4倍近い差がある

無痛分娩の実施率は2020年の8.6%から2023年に13.8%へ増えました。ただし都道府県別に見ると最高と最低で4倍近い差があります。公的統計にもとづく地域差の実態と、その差が何によって生まれているのかを整理しました。

無痛分娩とは|対応している施設の探し方と、予約前に確認したいこと

無痛分娩は麻酔で陣痛の痛みをやわらげる出産方法です。日本での実施率13.8%という公的データ、希望と実現のギャップが生まれる理由、対応施設の探し方、分娩予約の前に施設へ確認しておきたい項目を、公的な一次情報にもとづいて整理しました。

計画無痛分娩はいつ決める?予定日の決め方と、24時間対応は37.6%という前提

計画無痛分娩の日程は妊娠後期の健診で相談して決めるのが一般的で、決めた日が確定ではありません。東京都の医療機関調査では24時間対応できる施設は37.6%、初産婦を対象にしている施設は82.4%でした。日程の決まり方と、予定が動いたときの備えを整理しました。