無痛分娩とは|対応している施設の探し方と、予約前に確認したいこと

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

無痛分娩は、麻酔を使って陣痛の痛みをやわらげる出産方法です。日本では2023年時点で全分娩の13.8%で実施されており、都道府県によって割合が大きく異なります。東京都の調査では希望した人が63.9%だったのに対し、実際にできた人は35.8%でした。この差の一因は、分娩を予約した施設が無痛分娩に対応していなかったことです。この記事では、対応している施設の探し方と、分娩予約の前に確認しておきたい項目を整理します。

無痛分娩とはどのような出産方法か

無痛分娩とは、麻酔を使って陣痛の痛みをやわらげながら出産する方法です。日本では背中から細い管を入れて麻酔薬を注入する硬膜外麻酔が広く用いられています。「無痛」という言葉が使われますが、痛みがまったくなくなるという意味ではなく、痛みの感じ方には個人差があります。

大切なのは、無痛分娩はすべての施設で受けられるわけではないという点です。麻酔を担当できる医師の確保や、緊急時に対応できる体制が必要になるため、実施している施設は限られます。また実施している施設のなかでも、24時間いつでも対応するところ、あらかじめ日程を決めて行うところ(計画無痛分娩)、平日の日中のみのところなど、運用は施設ごとに大きく異なります。

したがって無痛分娩を考えている場合、「無痛分娩とは何か」を知ることと同じくらい、自分が通える範囲にどの施設があり、その施設がどういう運用をしているかを早い段階で把握することが重要になります。医学的な適応やリスクについては、必ず受診先の医師にご確認ください。

日本の実施率は13.8%。都道府県で大きく違う

厚生労働省の医療施設調査によると、全分娩に占める無痛分娩の割合は2020年の8.6%から2023年には13.8%へと増えています。3年でおよそ1.6倍です。

ただしこの数字は全国平均で、地域差がはっきりしています。最も高い東京都は24.9%で、およそ4人に1人が無痛分娩です。一方で1割に満たない県も複数あります。都道府県別の実施率は全国の統計データにまとめています。

この差は「地域による希望の差」というより、対応できる施設が地域にどれだけあるかの差という側面が大きいと考えられます。麻酔を担当できる医師の配置は施設の規模や体制に左右されるためです。住んでいる地域によって、無痛分娩という選択肢が現実的かどうかが変わってくるのが日本の現状です。

希望63.9%、実際にできたのは35.8%というギャップ

東京都が2024年に行った大規模な調査(回答11,364人)では、無痛分娩について次の結果が出ています。

項目割合
無痛分娩を希望した63.9%
実際に無痛分娩ができた35.8%
希望したが断念した28.1%

注目したいのは、「希望しなかった」と答えた人の内訳です。このうち17.2%は、分娩を予定していた施設が無痛分娩を行っていなかった、あるいは初産では対応していない施設だったと回答しています。つまり本人の希望が先にあったのではなく、施設の体制に合わせて希望が後から形づくられていたケースが一定数あるということです。

この構造を知っておくと、行動が変わります。「無痛分娩にするか自然分娩にするか」を先に悩むより、まず通える範囲にどんな選択肢があるかを調べるほうが、後悔の少ない順序になります。

対応している施設の探し方

無痛分娩に対応している施設を探す方法は、大きく3つあります。

  1. 厚生労働省「出産なび」で調べる — 全国の分娩を取り扱う施設について、費用の目安やサービスの実施状況が掲載されています。国が運営しているサイトで、掲載は施設からの申請にもとづいています。
  2. 当サイトの都道府県ページから探す全国の産婦人科を都道府県から探すページから、お住まいの地域の分娩取扱施設を一覧で確認できます。掲載は公的データにもとづくもので、費用はいただいていません。
  3. 施設の公式サイトを確認し、電話で直接聞く — 最終的にはこれが最も確実です。無痛分娩の運用は変更されることがあり、公開情報が最新とは限らないためです。

調べる順番としては、まず1と2で候補を絞り、実際に受診する前に3で確認する流れが効率的です。分娩の取り扱いを休止する施設も毎年一定数あるため、「以前は対応していた」という情報だけで判断しないことをおすすめします。

分娩予約の前に確認したい5つのこと

無痛分娩を希望する場合、施設に問い合わせる際は次の5点を確認しておくと、後から予定が変わる事態を減らせます。

  • 24時間対応か、日中のみか — 夜間や休日に陣痛が来た場合に無痛分娩ができるかどうかは施設によって異なります
  • 計画無痛分娩か、自然な陣痛を待つか — あらかじめ入院日を決める運用の施設が多くあります
  • 初産でも対応しているか — 初産婦は対象外としている施設があります
  • 追加費用はいくらか — 通常の分娩費用に上乗せされるのが一般的で、金額は施設ごとに幅があります
  • 麻酔を担当するのは誰か — 麻酔科医が担当するのか、産科医が兼ねるのかを確認しておくと体制の理解につながります

費用の目安については無痛分娩の費用と助成制度の記事でも整理しています。

調べるタイミングは「妊娠がわかってすぐ」

意外に見落とされがちなのが、調べるタイミングです。分娩予約の時期に関する調査では、約3分の2の人が妊娠3か月(11週)までに分娩予約を終えています。そして予約後に施設を変更した人は約7%にとどまります。

つまり、妊娠がわかってから2か月ほどの間に、その後の9か月が事実上決まっているということです。無痛分娩を考えているなら、この期間に情報を集める必要があります。人気のある施設では分娩予約が早期に埋まることもあります。

「まだ先のことだから」と後回しにすると、選択肢が残っていないという状況が起こりえます。妊娠の可能性に気づいた段階で、通える範囲の分娩取扱施設と、その対応状況をざっと把握しておくことをおすすめします。地域に分娩施設が少ない場合の考え方は分娩施設へのアクセスのデータもあわせてご覧ください。

よくある質問

無痛分娩は追加でいくらかかりますか?
通常の分娩費用に上乗せされるのが一般的で、金額は施設によって幅があります。数万円から十数万円程度を追加費用として設定している施設が多く見られますが、統一された基準はありません。厚生労働省「出産なび」では施設ごとの費用の目安が公開されていますので、候補の施設を比べる際に確認してみてください。
無痛分娩に健康保険は使えますか?
正常な経過の出産は病気やけがにあたらないため、現在は保険適用の対象外で、無痛分娩の費用も自費です。ただし2026年5月に成立した法改正により、正常分娩について保険給付の仕組みが導入されることが決まっています。施行時期や対象範囲は今後定まるため、最新の情報は厚生労働省の公表資料をご確認ください。
初産では無痛分娩ができないと聞きました。本当ですか?
施設の方針によります。初産婦は対象外としている施設がある一方、初産でも対応している施設も多くあります。医学的に一律で不可とされているわけではありません。希望する場合は、分娩予約の前に施設へ直接確認してください。
無痛分娩を希望していましたが、地域に対応施設がありません。
無痛分娩の実施率は都道府県で大きく異なり、通える範囲に対応施設がない地域もあります。里帰り出産の受け入れ先として対応施設を検討する方法もありますが、その場合は移動の負担や健診の引き継ぎも考える必要があります。まずは現在通っている施設に、地域の状況も含めて相談してみてください。
途中から無痛分娩に変更できますか?
施設の体制によります。陣痛が始まってからの対応可否、計画無痛分娩の日程変更の可否は施設ごとに運用が違います。判断が分かれる部分なので、可能性がある場合はあらかじめ「途中で希望が変わったらどうなるか」を確認しておくと安心です。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

あわせて読みたい

無痛分娩の費用相場と助成金|東京都の補助金は最大10万円

無痛分娩の追加費用は東京都の調査で平均約12.4万円、10万〜20万円程度が中心です。2025年10月開始の東京都の助成(最大10万円)の要件・申請方法、他自治体の助成例、費用確認のポイントを公的データで解説します。

産婦人科・産院の選び方|病院・診療所・助産所の違いと5つの比較軸

妊娠がわかって初めて産婦人科・産院を選ぶ方へ。病院・診療所・助産所の違い、分娩取扱の確認方法、通いやすさ・費用・産後ケアなど5つの比較軸、見学時のチェックリスト、転院の考え方を公的情報をもとに解説します。

バースプランの書き方|項目例・例文の型・提出タイミングを解説

バースプランは出産への希望を医師・助産師と共有するための計画シートです。陣痛中・分娩時・産後に分けた記入項目の具体例、そのまま使える例文の型、施設への確認方法と提出タイミングを解説します。

初産で無痛分娩は選べるのか|「初産は不可」など施設ごとに異なる方針と確認項目

初産で無痛分娩を選べるかどうかは、施設ごとの受け入れ方針によって異なります。「初産は不可」「初産は計画分娩のみ」といった運用の違いが生まれる背景と、東京都の調査データ、分娩予約の前に確認したい項目を整理しました。