無痛分娩の割合は13.8%|都道府県で4倍近い差がある

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

無痛分娩の実施率は、厚生労働省の医療施設調査によると2020年の8.6%から2023年には13.8%へ増えています。ただしこれは全国平均で、都道府県別に見ると最も高い東京都の24.9%に対し、1割に満たない県も複数あり、その差は4倍近くになります。この記事では、公的統計にもとづいて地域差の実態を示し、その差が「希望の差」ではなく「対応できる施設の数の差」である可能性を整理します。

全国では13.8%。3年で1.6倍に増えた

厚生労働省の医療施設調査によると、全分娩に占める無痛分娩の割合は次のように推移しています。

調査年無痛分娩の割合
2020年8.6%
2023年13.8%

3年で約1.6倍です。日本ではまだ少数派ではあるものの、はっきりとした増加傾向にあります。

この数字は施設からの報告を集計した公的統計であり、アンケートによる推計ではありません。都道府県別の内訳を含め、詳しい数値は全国の統計データに掲載しています。

都道府県で4倍近い差がある

全国平均の13.8%という数字だけを見ると実感と合わない方も多いはずです。それは地域差が非常に大きいためです。

最も高いのは東京都で24.9%。およそ4人に1人が無痛分娩という計算になります。一方で、割合が1割に満たない県も複数あり、最も低い県と比べると4倍近い開きがあります。

都市部で高く、地方で低いという傾向がありますが、単純に人口規模だけでは説明できない差もあります。無痛分娩に力を入れている施設が地域にあるかどうかで、県全体の数字が動くためです。

お住まいの都道府県の数値は、統計データのページから確認できます。

差を生んでいるのは「希望」ではなく「体制」

この地域差は、住民の希望の差なのでしょうか。東京都が2024年に実施した大規模調査(回答11,364人)の結果は、そうではない可能性を示しています。

項目割合
無痛分娩を希望した63.9%
実際に無痛分娩ができた35.8%

希望した人が6割を超えているのに、実際にできたのは3割台です。さらに「希望しなかった」と答えた人のうち17.2%は、分娩を予定していた施設が無痛分娩を行っていなかった、あるいは初産では対応していない施設だったと回答しています。

つまり希望が先にあるのではなく、施設の体制に合わせて希望が後から形づくられている面があるということです。実施率が低い地域は、希望する人が少ないのではなく、選べる状況にない可能性があります。

なぜ対応できる施設が限られるのか

無痛分娩には麻酔を担当できる医師と、緊急時に対応できる体制が必要です。これは施設の人員配置に直結します。

当サイトが厚生労働省「出産なび」の掲載情報を全件集計したところ、分娩を取り扱う施設のうち産科医が1人以下の施設が22.3%(367施設)ありました。また年間の分娩件数が200件以下の施設が39.5%(734施設)を占めます。

小規模な体制で分娩を担っている施設が全国に多く存在するという構造があり、そこに24時間対応の無痛分娩の体制を求めるのは容易ではありません。実施率の地域差は、医師の配置の地域差を反映していると見るのが自然です。

詳しい集計は出産環境白書2026にまとめています。

この数字をどう使うか

無痛分娩を考えている方にとって、この地域差のデータには実用的な意味があります。

  • 実施率が高い地域 — 選択肢が複数ある可能性が高く、施設ごとの運用(24時間対応か計画のみか、初産の可否など)を比較できます
  • 実施率が低い地域 — 通える範囲に対応施設があるかを早めに確認する必要があります。ない場合は、里帰り先を含めて検討することになります

いずれの場合も、県全体の数字より、自分が通える範囲に何があるかのほうが重要です。全国の産婦人科を都道府県から探すページから、お住まいの地域の分娩取扱施設を確認できます。

施設の選択にも影響が出ている

日本産婦人科医会の分析には、次のような記述があります。

無痛分娩の非実施施設では分娩数が減少しているものの、無痛分娩実施施設では分娩数が微増している

出生数そのものが減り続けているなかで、実施施設だけが微増しているというのは、妊婦さんの選択が集合的に無痛分娩の対応施設へ向かっていることを示しています。

これは施設側にとっては経営に関わる話ですが、出産する側にとっては「対応施設が今後さらに集中していく可能性がある」という意味を持ちます。人気のある施設では分娩予約が早く埋まることもあるため、希望がはっきりしている場合は分娩予約の時期も含めて早めに動くことをおすすめします。

よくある質問

無痛分娩の割合はこれからも増えますか?
2020年8.6%から2023年13.8%という推移を見る限り増加傾向ですが、麻酔を担当できる医師の配置に左右されるため、地域によって進み方は異なると考えられます。将来の予測を断定することはできません。
自分の県の実施率はどこで見られますか?
当サイトの統計データのページに、厚生労働省の医療施設調査にもとづく都道府県別の実施率を掲載しています。原典はe-Statで公開されています。
実施率が低い県では無痛分娩はできませんか?
県全体の割合が低くても、対応している施設は存在します。重要なのは県の数字ではなく、通える範囲に対応施設があるかどうかです。都道府県ページから施設を確認し、直接問い合わせてみてください。
海外と比べて日本の割合は低いのですか?
国によって統計の取り方や医療体制が異なるため単純な比較は適切ではありませんが、日本の割合が欧米の一部の国より低い水準にあることは各種の資料で指摘されています。ここでは日本国内の公的統計にもとづく数値のみを扱っています。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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