療育手帳とは|根拠は法律でなく昭和48年の通知、交付は知事・判定は児童相談所

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

療育手帳は、昭和48年の厚生事務次官通知(厚生省発児第156号)にもとづく制度で、手帳そのものを定めた法律の条文はありません。児童相談所又は知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に、都道府県知事等が交付します。通知上の区分は重度「A」とその他「B」で、名称や細かな区分は自治体ごとに違います。申請の流れ、交付後の手続き、特別児童扶養手当・障害児福祉手当との関係を、通知と条文で確認します。

療育手帳は、法律ではなく通知にもとづく制度

療育手帳は、知的障害のある人に都道府県知事などが交付する手帳です。ただし、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳と違い、手帳そのものの根拠を定めた法律の条文はありません。根拠は、昭和48年(1973年)9月27日の厚生省発児第156号厚生事務次官通知「療育手帳制度について」と、その実施方法を示した同日付の児発第725号厚生省児童家庭局長通知「療育手帳制度の実施について」です。

厚生労働省の「療育手帳制度の概要」は、この通知を「技術的助言(ガイドライン)」と位置づけ、各都道府県知事等は通知に基づいてそれぞれの判断で実施要綱を定めていると説明しています。同じ資料では、令和6年度末の交付者数は1,321,350人です。

療育手帳身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳
根拠厚生事務次官通知(昭和48年)身体障害者福祉法第15条精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第45条

知的障害者福祉法の条文にも、確認した範囲では療育手帳の規定は見当たりません。精神保健福祉法の第45条には、手帳の対象を「精神障害者(知的障害者を除く。)」とする括弧書きがあり、知的障害は療育手帳の側で扱う整理になっています。

通知に書かれていること:目的、対象、実施主体、記載事項

厚生事務次官通知の別紙「療育手帳制度要綱」は、全体が7項目の短い文書です。内容は次のとおりです。

  • 目的(第1):知的障害児(者)に一貫した指導・相談を行うとともに、各種の援助措置を受け易くするため、手帳を交付する
  • 交付対象者(第2):児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者
  • 実施主体(第3):都道府県知事(指定都市は市長)が、市町村その他の関係機関の協力を得て実施する
  • 名称と記載事項(第4):名称は「療育手帳」。氏名・住所・生年月日・性別、障害の程度(重度とその他の別)、保護者の氏名・住所・続柄、指導・相談等の記録が主な記載事項
  • 障害の程度の確認(第6):交付後、原則として2年ごとに児童相談所又は知的障害者更生相談所で判定を行う
  • 交付の手続(第5)・変更の届出(第7):次の節以降で説明

児発第725号は、手帳の名称を「療育手帳」としたうえで「別名を併記することはさしつかえない」と述べています。東京都の「愛の手帳」のように、自治体で呼び方が違う理由はここにあります。

交付対象は「知的障害であると判定された者」です。どのような検査や基準で判定するかは、この記事では扱いません。判定の内容については、児童相談所、かかりつけの医療機関、市区町村の障害福祉担当に相談してください。

申請から交付まで:窓口は市区町村、判定は児童相談所か更生相談所

通知が定める流れは次のとおりです。

  1. 知的障害者本人またはその保護者が、居住地を管轄する福祉事務所の長(福祉事務所のない町村は町村長)を経由して、都道府県知事に交付を申請する。申請は写真を添えた申請書で行う
  2. 申請書は児童相談所又は知的障害者更生相談所に送られ、そこで判定が行われる
  3. 都道府県知事が判定結果にもとづいて交付の可否を決め、申請時の経由機関を通じて申請者に交付する

判定する機関は、児童福祉法第12条で都道府県に設置が義務づけられた児童相談所と、知的障害者福祉法第12条で都道府県に設置が義務づけられた知的障害者更生相談所です。一般に、18歳未満は児童相談所、18歳以上は更生相談所の系統で判定が行われます。

実際の窓口と順序は自治体で違います。たとえば東京都は、愛の手帳の判定を18歳未満は住まいを管轄する児童相談所、18歳以上は東京都心身障害者福祉センターで行い、いずれも判定機関に直接予約する方式を案内しています。埼玉県は、18歳未満は児童相談所、18歳以上は総合リハビリテーションセンターで判定を受けるとしたうえで、市町村の障害者福祉担当課に事前に相談して申請するよう案内しています。さいたま市在住の人は、さいたま市に申請し、さいたま市長が交付します。

調べ方は、「市区町村名+療育手帳」(東京都なら「愛の手帳」)で検索し、障害福祉担当課のページを見るのが近道です。通知には申請の手数料の記載が見当たりません。必要書類、判定までの期間、費用の有無は窓口で確認してください。

区分は通知では「A」と「B」、実際の呼び方は自治体ごと

児発第725号の通知は、障害の程度を重度とその他に区分し、手帳の記載欄には重度を「A」、その他を「B」と表示するとしています。同時に、「中度等の他の区分を定めることもさしつかえない」とも書かれています。厚生労働省の概要資料にも、独自に細分化している自治体があると記載されています。

自治体の公式ページで確認できた例は次のとおりです。

自治体手帳の呼び方区分の数え方
東京都愛の手帳(東京都療育手帳)1度から4度の4区分
埼玉県療育手帳4つの区分(区分名は県ページ上では画像で表示)

自治体によって区分の数や呼び名が異なるため、転居するときは転居先の窓口に、これまでの手帳の区分の扱いを確認してください。この記事では、各区分に当たる状態の説明や、検査値との対応は扱いません。

手帳で受けやすくなる援助措置と、手当との関係

児発第725号の通知は、療育手帳のねらいの一つを「援助措置を受け易くすること」とし、例として次の6つを挙げています。

  • 特別児童扶養手当
  • 心身障害者扶養共済
  • 国税、地方税の諸控除及び減免税
  • 公営住宅の優先入居
  • NHK受信料の免除
  • 旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引

これは1973年の通知の例示です。現在どの制度で手帳を使えるか、どの区分が対象かは制度と自治体ごとに異なるため、利用したい制度の窓口で確認してください。

特別児童扶養手当との関係

特別児童扶養手当の認定請求には、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則第1条第2号が医師又は歯科医師の診断書の添付を定めています。一方、国の認定通知(昭和50年児発第576号)は、療育手帳の障害の程度が「A」と記載されているものは施行令別表第3の1級に該当するものとして認定してさしつかえないと書いています。「A」の記載がない場合でも、療育手帳を取得したときの判定資料を診断書に添付して、診断書の該当項目の記載を省略できるとしています。

手帳があると手当の手続きが簡単になる場合があります。ただし、手当は認定基準で判断されるもので、手帳を持っていること自体が受給の要件とは条文に書かれていません。手帳がない場合は、診断書で請求する形が通知上の基本です。請求した月の翌月分から支給が始まるため、手帳の取得を待つかどうかも含めて、市区町村の窓口に早めに相談してください。

障害児福祉手当との関係

同じ法律の第17条は、障害児福祉手当を重度障害児(第2条第2項:政令で定める程度の重度の障害の状態にあるため、日常生活において常時の介護を必要とする者)に支給すると定めています。確認した範囲では、条文に療育手帳の所持を要件とする記載は見当たりません。認定は手帳の有無ではなく、手当ごとの認定基準で行われます。

税金の障害者控除

国税庁のタックスアンサー(No.1160)では、知的障害者の障害者控除の対象は、児童相談所、知的障害者更生相談所などで知的障害者と判定された人で、そのうち重度と判定された人は特別障害者になります。控除額は、令和8年4月1日現在で障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。

交付後の手続き:再判定、変更の届出、転居、再交付、返還

交付後の手続きも通知に定められています。

  • 障害の程度の確認(再判定):手帳に記載された次の判定年月に行う。通知上は原則として2年後で、2年を超えてよいと認められる場合は、その時期を指定できる
  • 記載事項の変更:本人や保護者の氏名・住所に変更があったときは、手帳を添えて届け出る
  • 他の都道府県への転居:新住所地の都道府県知事が旧住所地に通知する。新しい手帳を交付してもよいとされている
  • 再交付:手帳をなくしたときなどに申請する
  • 返還:対象に該当しなくなったときなどに都道府県知事に返す

再判定の時期は自治体で違います。東京都は、3歳、6歳、12歳、18歳に達したときなどに更新の判定を案内しています。

手帳以外の相談先は、医療的ケアの必要な子どもについては医療的ケア児、窓口全般については子どもの相談窓口にまとめています。

よくある質問

療育手帳は法律にもとづく制度ですか。
手帳の根拠を定めた法律の条文は、確認した範囲では見当たりません。根拠は昭和48年9月27日の厚生省発児第156号厚生事務次官通知「療育手帳制度について」で、厚生労働省はこの通知を技術的助言(ガイドライン)としています。各都道府県知事等が通知にもとづいて実施要綱を定めています。
療育手帳はどこに申請しますか。
通知では、居住地を管轄する福祉事務所の長(福祉事務所のない町村は町村長)を経由して都道府県知事に申請する流れです。実際の窓口は自治体で違います。東京都は判定機関に直接予約する方式を案内し、埼玉県は市町村の障害者福祉担当課への事前相談を案内しています。お住まいの市区町村の障害福祉担当課で確認してください。
手帳の区分「A」「B」は全国共通ですか。
通知上は重度を「A」、その他を「B」と表示するとされています。ただし、中度などの区分を定めてもよいとされ、自治体によって細分化や呼び方が異なります。東京都は愛の手帳として1度から4度の4区分、埼玉県は4つの区分です。
療育手帳がないと特別児童扶養手当は受けられませんか。
手帳の所持を受給要件とする記載は、法律の条文には確認した範囲では見当たりません。手当は認定基準で判断され、請求には医師又は歯科医師の診断書が必要です。手帳に「A」の記載があるときは、国の通知上、診断書に代えて認定してよいとされています。個別の取扱いは窓口で確認してください。
療育手帳と身体障害者手帳の違いは何ですか。
身体障害者手帳は身体障害者福祉法第15条に根拠があり、都道府県知事が審査して交付します。療育手帳は法律ではなく通知にもとづく制度で、児童相談所又は知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に交付されます。
手帳の更新はいつですか。
通知上の確認時期は原則として交付から2年後で、手帳に次の判定年月が記載されます。自治体で運用が違い、東京都は3歳、6歳、12歳、18歳に達したときなどを案内しています。手帳の判定欄と自治体の案内で確認してください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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