医療的ケア児とは|法律第2条の定義と支援センターの探し方

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律第2条は、「医療的ケア」を人工呼吸器による呼吸管理・喀痰吸引その他の医療行為、「医療的ケア児」を日常生活・社会生活のために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠な児童(18歳未満の者及び18歳以上で高等学校等に在籍する者)と定義しています。2016年の児童福祉法改正では地方公共団体の努力義務でしたが、2021年制定のこの法律で国・地方公共団体・保育所や学校の設置者に責務が課されました。保育所・学校での看護師等の配置、全47都道府県にある医療的ケア児支援センターの役割と探し方、家族が使える相談先、18歳以降・高校生の扱いを条文にもとづいてまとめました。

医療的ケア児とは、法律でどう定義されているか

「医療的ケア児」という言葉は、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)第2条で定義されています。

同条第1項は「医療的ケア」を「人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為」と定めます。続く第2項は「医療的ケア児」を「日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童」とし、対象を「十八歳未満の者」と「十八歳以上の者であって高等学校等に在籍する者」の両方に定めています。

つまり18歳になった時点で自動的に対象から外れるわけではなく、高等学校等(高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部)に在籍していれば、18歳以上でも法律上の医療的ケア児にあたります。医療的ケアの具体的な方法や、個々のお子さんの状態については、主治医にご相談ください。

2016年の「努力義務」から、2021年の「責務」へ

医療的ケア児に関する法律上の位置づけは、2度の法改正で段階的に強くなってきました。

2016年(平成28年)の改正で、児童福祉法第56条の6第2項に次の規定が加わりました。

地方公共団体は、人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児が、その心身の状況に応じた適切な保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を受けられるよう、保健、医療、福祉その他の各関連分野の支援を行う機関との連絡調整を行うための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

ここでの表現は「努めなければならない」という努力義務です。

2021年に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が制定されると、第4条で国、第5条で地方公共団体に、医療的ケア児支援に係る施策を実施する「責務を有する」という規定が置かれました。条文の文言は「努めなければならない」から「責務を有する」に変わっています。この法律は公布の日から起算して三月を経過した日に施行するとされ、2021年9月18日に施行されました。現行版は2025年10月1日施行の改正を反映したものです。2026年7月31日には改正法(令和8年法律第77号)が公布され、2027年4月1日に施行されます。こども家庭庁のページは、改正後の法律名を「医療的ケア児等及び重症心身障害者並びにそれらの家族に対する支援に関する法律」と表記しています。改正後の条文は、施行時点で確認してください。

保育所・学校も「受入れの努力」ではなく「責務」を負う

受入れ側の責務も、この法律で明文化されています。第6条は保育所・認定こども園・家庭的保育事業等の設置者、第7条は幼稚園・小学校・中学校・高等学校等の設置者に対し、在籍する医療的ケア児に適切な支援を行う責務を課しています。

体制面では第9条第2項が保育所等の設置者に、看護師等(保健師・助産師・看護師・准看護師)または喀痰吸引等を行うことができる保育士等の配置その他の必要な措置を求めています。学校については第10条第2項が、保護者の付添いがなくても医療的ケアを受けられるよう、看護師等の配置その他の必要な措置を学校の設置者に求めています。

看護師等以外にも、研修を受けて都道府県知事の認定を受けた教職員(認定特定行為業務従事者)が、喀痰吸引・経管栄養など特定の行為に限り実施できる仕組みがあります(社会福祉士及び介護福祉士法にもとづく制度)。実際にどの体制が整っているかは保育所・学校ごとに異なるため、入園・入学の前に設置者へ直接確認することが必要です。2026年4月から全国の市町村で実施されているこども誰でも通園制度も、医療的ケアを必要とするこどもを対象に含めています。

医療的ケア児支援センターの役割と探し方

第14条は、都道府県知事が指定した法人(医療的ケア児支援センター)に次の業務を行わせ、または自ら行うことができると定めています。

  • 医療的ケア児・家族・関係者への相談対応、情報の提供・助言その他の支援(第1号)
  • 関係機関・民間団体への医療的ケアについての情報提供・研修(第2号)
  • 関係機関・民間団体との連絡調整(第3号)

こども家庭庁が公表する一覧(令和8年3月時点)では、全47都道府県すべてに医療的ケア児支援センターが設置されています。名称は都道府県ごとに異なり(「〇〇県医療的ケア児支援センター」など)、複数の地域拠点・支部を持つ都道府県もあります。お住まいの都道府県のセンターは、「都道府県名+医療的ケア児支援センター」で検索するか、こども家庭庁のウェブサイトに掲載されている一覧から確認できます。第14条第3項は、身近な場所で必要な支援を受けられるよう配慮することも定めています。

家族が使える相談先

制度上の相談体制は第12条に定められ、国・地方公共団体が医療、保健、福祉、教育、労働等の関係機関・民間団体と連携し、相談に総合的に応じる体制を整備するとされています。実際の窓口としては、次のようなものがあります。

  • 市町村の障害福祉担当・保健担当の窓口(申請・手帳・福祉サービスの相談)
  • 医療的ケア児支援センター(専門的な相談・情報提供)
  • 相談支援専門員(障害児支援利用計画の作成など、福祉サービスの利用調整を担う専門職)

「いま受診すべきか」といった医学的な判断は、この記事や相談窓口の範囲外です。子どもの受診で迷ったときの相談窓口や、かかりつけの医療機関にご相談ください。日頃の相談先を一か所に決めておくと、情報が分散しにくくなります(かかりつけの小児科の決め方)。

18歳以降・高校生の扱いはどうなるか

第2条第2項の定義どおり、18歳以上でも高等学校等に在籍していれば医療的ケア児にあたります。一方、高等学校等を卒業した後や、高等学校等に在籍しない18歳以上の人は、この定義上の医療的ケア児からは外れます。

ただし第14条第1項は、医療的ケア児支援センターの相談対象について、「十八歳に達し、又は高等学校等を卒業したことにより医療的ケア児でなくなった後も医療的ケアを受ける者のうち引き続き雇用又は障害福祉サービスの利用に係る相談支援を必要とする者」を含めると定めています。つまり定義上は対象から外れても、就労や福祉サービスの利用に関する相談はセンターに続けて相談できる仕組みです。

また第3条第3項の基本理念は、医療的ケア児が18歳に達し、または高等学校等を卒業した後も、適切な保健医療サービス及び福祉サービスを受けながら日常生活及び社会生活を営むことができるようにすることに配慮すると掲げています。進学・就労など次の段階に進む前に、相談支援専門員や医療的ケア児支援センターに、支援をどう引き継ぐかを確認してください。

よくある質問

医療的ケア児とは、具体的にどう定義されていますか?
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律第2条で、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為)を受けることが不可欠な児童と定義されています。対象は18歳未満の者、および18歳以上で高等学校等に在籍する者です。
保育所や学校は医療的ケア児を必ず受け入れてくれますか?
法律第6条・第7条は保育所・学校の設置者に適切な支援を行う責務を課し、第9条・第10条は看護師等の配置などの体制整備を求めています。ただし実際に配置できる人員や設備は施設ごとに異なるため、受入れの可否や条件は入園・入学の前に設置者へ直接確認してください。
医療的ケア児支援センターにはどんなことを相談できますか?
法律第14条にもとづき、医療的ケア児・家族・関係者への相談対応や情報の提供・助言、関係機関との連絡調整などを行います。全47都道府県に設置されており(こども家庭庁調べ、令和8年3月時点)、お住まいの都道府県のセンターは「都道府県名+医療的ケア児支援センター」で検索すると見つかります。
18歳を過ぎると医療的ケア児支援センターに相談できなくなりますか?
定義上は18歳到達や高等学校等の卒業で医療的ケア児から外れますが、法律第14条第1項は、その後も医療的ケアを受けながら雇用や障害福祉サービスの利用に関する相談支援を必要とする人を、センターの相談対象に含めています。進学・就労の前に一度相談しておくと、支援の切れ目を防ぎやすくなります。
相談支援専門員とは誰のことですか?
障害児支援利用計画の作成など、福祉サービスの利用調整を担う専門職です。市町村や相談支援事業所に配置されており、医療的ケア児支援センターや市町村の障害福祉担当窓口を通じて紹介を受けられます。
吸引や経管栄養の具体的な方法を教えてもらえますか?
この記事は制度の説明にとどめており、医療的ケアの実技や個々のお子さんの状態に応じた対応は扱いません。手技や在宅でのケアの方法は、主治医や訪問看護師など医療専門職にご確認ください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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