未熟児養育医療とは|母子保健法第20条の対象と給付範囲を条文で確認

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

養育医療は、母子保健法第20条にもとづき市町村が行う、入院養育を必要とする未熟児への医療給付(または費用の支給)です。対象は同法第6条第6項の未熟児で医師が入院養育を必要と認めたもの、給付の範囲は同条第3項に5項目が列挙されています。対象の目安、指定養育医療機関で受けること、申請の流れと実施主体、自己負担の仕組み、低体重児の届出(第18条)との違いを、条文とこども家庭庁の通知にもとづいてまとめています。障害者総合支援法の「育成医療」とは別の制度です。

「養育医療」は障害者総合支援法の「育成医療」とは別の制度です

養育医療は、母子保健法にもとづいて未熟児(低出生体重児など)の入院治療を支援する制度です。名称の似た「育成医療」は障害者総合支援法の自立支援医療の一つで、根拠となる法律も対象も異なります。医療機関の案内や自治体のページで両方の名前が並んで出てくることがありますが、ここで扱うのは母子保健法の養育医療です。育成医療の対象・負担上限月額・申請の流れは育成医療(自立支援医療)とはで整理しています。

母子保健法が定める「未熟児」と、市町村が行う養育医療の給付

母子保健法第6条第6項は、未熟児を次のように定義しています。

「未熟児」とは、身体の発育が未熟のまま出生した乳児であつて、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのものをいう。

この未熟児のうち、養育のため病院又は診療所に入院することを必要とするものに対して、市町村が養育に必要な医療の給付(またはこれに代えて費用を支給)を行う制度が、母子保健法第20条第1項の養育医療です。

給付の範囲は条文で5項目に列挙されている

養育医療で何がカバーされるかは、母子保健法第20条第3項に次の5項目として列挙されています。

  1. 診察
  2. 薬剤又は治療材料の支給
  3. 医学的処置、手術及びその他の治療
  4. 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
  5. 移送

入院中の保険診療にかかる費用のうち、この範囲に含まれる部分が対象です。実際に入院が必要かどうか、どの治療を行うかは主治医の判断であり、この記事では立ち入りません。

対象の目安(こども家庭庁の通知が示す基準)

対象になるのは、母子保健法第6条第6項の未熟児であって医師が入院養育を必要と認めたものです。こども家庭庁の通知「未熟児養育事業の実施について」(こ成母第78号)は、この「諸機能を得るに至っていない」状態の目安として、出生時体重2,000グラム以下のもの、または生活力が特に薄弱で通知が定める体温・呼吸循環器・消化器等に関する一定の症状のいずれかを示すもの、を挙げています。

これらはあくまで通知上の目安であり、実際に給付の対象になるかどうかは主治医が行う入院養育の必要性の判断にもとづきます。個々の状態についての説明は、かかりつけの産科・小児科または入院先の医療ソーシャルワーカーにご確認ください。

指定養育医療機関で受ける給付。実施主体は市町村

養育医療は、都道府県知事が指定する病院・診療所・薬局(指定養育医療機関)で受ける給付です(母子保健法第20条第4項・第5項)。指定は都道府県知事が行い、指定養育医療機関の一覧を公開している都道府県もあります。千葉県の案内では、県外の指定医療機関に入院した場合も対象になるとしています。転院するときは、転院先が指定養育医療機関かどうかと、市町村への手続きが必要かを確認してください。

実施主体は市町村です。以前は都道府県が担っていましたが、2013年(平成25年)4月1日に、地域の自主性・自立性を高めるための関連法にもとづいて事務が市町村に移譲されました。申請は母子保健法施行規則第9条により、未熟児の保護者が居住地の市町村長に申請書を提出する形で行います。給付が決まると、同条第2項により養育医療券が交付されます。申請書のほかに医師の意見書や世帯の所得を確認する書類を求める市町村が多く、必要書類は市町村の案内で確認します。

申請期限は自治体で違う。調べ方

母子保健法と同法施行規則には、申請の期限を全国一律に定めた規定は確認した範囲では見当たりません。期限や必要書類は市町村ごとの案内で決まっています。医師の意見書を入院先に書いてもらう必要があるため、入院中に手続きを始めることになります。

お住まいの市町村の期限は、「自治体名+養育医療」で検索し、市区町村の担当窓口(子育て支援課・母子保健課など)で確認するのが確実です。入院先に医療ソーシャルワーカーがいる場合は、書類の準備について相談できます。

自己負担の仕組みと、健康保険・子ども医療費助成との関係

母子保健法第20条第6項は、支給する費用の額を、診療報酬の例により算定した額のうち「本人及びその扶養義務者が負担することができないと認められる額」と定めています。そのうえで第21条の4第1項により、市町村長は本人又はその扶養義務者から、その負担能力に応じて費用の全部または一部を徴収できます。自己負担は世帯の所得税額などに応じて段階的に決まる仕組みです。

千葉県の案内では、次のように説明されています。

  • 自己負担金は後日市町村から保護者に請求され、医療機関の窓口で支払う必要はない
  • 未熟児の治療以外の治療や差額ベッド代など保険対象外の費用は養育医療の対象外
  • 養育医療の自己負担金が子ども医療費の自己負担額を超える場合、超えた額が子ども医療費の支給対象になる

子ども医療費助成との関係は市町村で扱いが違うため、子ども医療費助成の担当課にも確認してください。申請書には赤ちゃんの健康保険の情報を書くため、出生届と健康保険への加入を先に済ませておくと手続きが進めやすくなります(出産後の手続き一覧)。

低体重児の届出(第18条)との違い

母子保健法第18条は、養育医療とは別に低体重児の届出を定めています。

体重が二千五百グラム未満の乳児が出生したときは、その保護者は、速やかに、その旨をその乳児の現在地の市町村に届け出なければならない。

この届出は体重2,500グラム未満のすべての乳児が対象で、入院の有無にかかわらず保護者に届出の義務があります。一方、養育医療は入院養育を必要とする未熟児に対する医療の給付で、対象も手続きも別です。届出は市町村が対象児を早期に把握し、必要に応じて保健師等の訪問指導につなげるためのもので、多くの場合は出産した医療機関から案内されます。届出を済ませたことと、養育医療の申請が必要かどうかは別に確認してください。

よくある質問

養育医療と育成医療は同じ制度ですか?
別の制度です。養育医療は母子保健法にもとづき市町村が行う未熟児への医療給付、育成医療は障害者総合支援法の自立支援医療の一つで、根拠となる法律も対象も異なります。
対象になるのはどんな赤ちゃんですか?
母子保健法第6条第6項の未熟児で、医師が入院養育を必要と認めたものです。こども家庭庁の通知は目安として出生時体重2,000グラム以下、または生活力が特に薄弱で一定の症状を示すものを挙げていますが、実際の判断は主治医が行います。
どこで申請しますか?
未熟児の居住地の市町村長に申請書を提出します(母子保健法施行規則第9条)。実施主体は市町村で、2013年4月に都道府県から移譲されました。医師の意見書など必要書類は市町村の案内で確認してください。
申請の期限はいつまでですか?
全国一律の期限は法令上見当たらず、市町村ごとに定められています。医師の意見書が必要になるため入院中に手続きを始めることになります。期限は「自治体名+養育医療」で調べ、市町村の窓口で確認してください。
費用はいくらかかりますか?
市町村長は本人又はその扶養義務者から、負担能力に応じて費用の全部または一部を徴収できます(母子保健法第21条の4)。自己負担は世帯の所得税額などに応じて決まります。差額ベッド代など保険対象外の費用は対象外です。子ども医療費助成との関係は市町村で扱いが違います。
低体重児の届出と養育医療の申請は同じ手続きですか?
違います。低体重児の届出(母子保健法第18条)は体重2,500グラム未満のすべての乳児が対象で、保護者に届出の義務があります。養育医療は入院養育を必要とする未熟児への医療給付で、別に申請が必要です。
養育医療はどこで受けられますか?
都道府県知事が指定する病院・診療所・薬局(指定養育医療機関)に委託して行われます(母子保健法第20条第4項・第5項)。転院するときは、転院先が指定養育医療機関かどうかと、市町村への手続きの要否を確認してください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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