「検診」と「健診」は何が違う?|法令ごとの使い分けを条文で整理

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

「検診」と「健診」はどちらも法令で使われている言葉で、指しているものが違います。母子保健法や妊婦健診の告示は「健康診査」、労働安全衛生法第66条は「健康診断」、健康増進法施行規則第4条の2は「がん検診」。同じ条文の中に「健康診査」と「がん検診」が並んでいる箇所もあります。条文で違いを整理しました。

法令は3つの言葉を使い分けている

健診・検診・健康診断は、日常では入り混じって使われますが、法令では別々の言葉として使われています。大きく分けると次の3つです。

言葉主な根拠
健康診査母子保健法1歳6か月児健診、3歳児健診、妊婦健診
健康診断労働安全衛生法勤務先で受ける定期健康診断
検診健康増進法施行規則がん検診、歯周病検診、骨粗鬆症検診

どの言葉が使われているかで、誰が実施主体で、誰に義務があり、費用がどう扱われるかが変わります。

「健康診査」— 母子保健法の言葉

母子保健法第12条は、市町村に対して1歳6か月児と3歳児の健康診査を行わなければならないと定めています。第13条は、それ以外について「必要に応じ、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない」としています。妊婦健診もこの第13条にもとづくもので、基準を示した告示の名称も「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」です。

つまり母子保健の分野では、法令上の言葉は「健康診査」で統一されています。「乳幼児健診」「妊婦健診」は、これを略した呼び方です。年齢ごとの健診の並びは乳幼児健診のスケジュールにまとめています。

「健康診断」— 労働安全衛生法の言葉

勤務先で受ける健康診断の根拠は労働安全衛生法第66条です。第1項は「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」と定めています。

この条文の特徴は、第5項で労働者側にも受診の義務が書かれていることです。「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない」とあり、ただし書きで、事業者の指定した医師以外が行う同等の健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出したときはこの限りでない、としています。実施する側と受ける側の両方に義務が書かれている点が、市町村の健診・検診とは違います。

「検診」— 健康増進法にもとづく市町村の事業

がん検診の根拠は健康増進法第19条の2です。条文は「市町村は、第十七条第一項に規定する業務に係る事業以外の健康増進事業であって厚生労働省令で定めるものの実施に努めるものとする」とあり、中身は省令に委ねられています。

その省令が健康増進法施行規則第4条の2で、次の6つを挙げています。

  • 歯周病検診
  • 骨粗鬆症検診
  • 肝炎ウイルス検診
  • 特定健康診査の対象とならない方などに対する健康診査
  • その方に対する保健指導
  • がん検診

市町村のがん検診が「実施に努めるものとする」=努力義務として書かれていることが、自治体によって対象年齢・回数・自己負担額が違う理由です。

同じ条文に「検診」と「健康診査」が並んでいる

いま見た施行規則第4条の2は、1つの条文の中に「歯周病検診」「がん検診」と「健康診査」の両方が並んでいます。これが使い分けのいちばんわかりやすい手がかりです。

  • 検診 … 特定の病気を見つけることを目的にした検査(がん・歯周病・骨粗鬆症・肝炎ウイルス)
  • 健康診査/健康診断 … 特定の病気に絞らず、健康状態を全体として確認するもの

子宮頸がん検診が「検診」なのは前者、乳幼児健診や妊婦健診が「健康診査」なのは後者にあたるためです。なお、両者の違いを定義した規定があるわけではありません。確認した範囲では、こうした使い分けが各法令の条文に表れている、という整理になります。

言葉ではなく、実施主体と費用で確認する

案内が「健診」でも「検診」でも、確認する中身は同じです。

  • 誰が実施するのか(市町村か、勤務先か、加入している保険者か)
  • 費用がどうなるのか(無料か、一部自己負担か、受診票が使えるか)
  • 対象と期限があるか(年齢・年度・妊娠週数など)

この3つは、届いた案内か、住民票のある市町村の窓口で確認できます。子宮頸がん検診の対象年齢と間隔は子宮頸がん検診の費用と受け方、妊婦健診の回数は妊婦健診は何回受ける?で扱っています。

よくある質問

「検診」と「健診」はどちらが正しいですか?
どちらも法令で使われている言葉で、指しているものが違います。健康増進法施行規則第4条の2は「がん検診」「歯周病検診」、母子保健法は「健康診査」、労働安全衛生法第66条は「健康診断」と書き分けています。
乳幼児健診は法令ではどう書かれていますか?
母子保健法第12条・第13条で「健康診査」と書かれています。1歳6か月児と3歳児については第12条で市町村に実施義務があり、それ以外は第13条で必要に応じて行うか受診を勧奨する位置づけです。
がん検診が自治体によって違うのはなぜですか?
健康増進法第19条の2が、市町村の健康増進事業について実施に努めるものとすると定めているためです。努力義務として書かれているため、対象年齢・回数・自己負担額は市町村ごとに異なります。
勤務先の健康診断は受けないといけませんか?
労働安全衛生法第66条第5項は、労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならないと定めています。ただし、事業者の指定した医師以外が行う同等の健康診断を受け、その結果を証明する書面を提出したときは、この限りでないとされています。
妊婦健診は「検診」ですか「健診」ですか?
法令上は「健康診査」です。基準を定めた告示の名称も「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」となっています。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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