不妊治療の休暇|法律に定めはなく会社の制度次第、年休の時間単位と助成金の現行コース

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

不妊治療のための休暇を会社に義務づける法律の条文は、確認した範囲では見当たりません。休暇があるかどうか、有給か無給かは、勤め先の就業規則で決まります。法律上の手段としては、労使協定があれば年5日以内で時間単位の年次有給休暇が使えます(労働基準法第39条第4項)。国は次世代法の指針とくるみんプラス認定で導入を後押しし、中小企業には両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)があります。2026年度の不妊治療の区分は30万円で、支給先は事業主です。

不妊治療のための休暇を会社に義務づける条文は見当たらない

不妊治療のための休暇は、法律で全国一律に決まっているものではありません。厚生労働省の資料では、不妊治療のための休暇制度は、事業主が労働協約や就業規則に定めて導入する制度として扱われています。労働基準法で定められた年次有給休暇や、生理日の就業が著しく困難な場合の休暇(生理休暇)のように、請求すれば会社が拒めない形の不妊治療休暇は、確認した範囲では見当たりませんでした。

つまり、休暇が使えるかどうか、有給か無給か、何日まで取れるかは、勤め先の就業規則で決まります。まずは自分の会社の就業規則や人事の窓口で、不妊治療に使える制度があるかを確認するのが出発点です。

この記事は制度の整理です。治療の内容や方法、通院の頻度の目安といった医学的な判断には触れません。治療の進め方は、受診先の医師に確認してください。

法律で使える休暇は年次有給休暇で、時間単位にできる場合がある

会社に不妊治療専用の休暇がない場合、法律上の休暇として使えるのは年次有給休暇です。労働基準法第39条第4項は、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定があれば、時間を単位として有給休暇を与えることができると定めています。条文では、時間単位で与えられる日数は「五日以内に限る」とされています。

この定めは、使用者が労使協定を結んだ場合に時間単位の付与ができる、という仕組みです。協定がない会社では、時間単位の請求が当然にできるわけではありません。半日単位については、労働基準法の条文には見当たらず、会社の制度として設けられている場合に使えます。

通院のたびに1日休むのが難しい場合は、時間単位や半日単位の年次有給休暇があるかを、就業規則で確認してみてください。

国が会社に求めていること(次世代法の指針とくるみんプラス)

国は、会社に休暇制度を義務づける代わりに、導入を後押しする形をとっています。厚生労働省のページによると、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針が改正され、行動計画に盛り込むことが望ましい事項として「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」が加わりました(令和3年2月告示、同年4月から適用)。「望ましい事項」という位置づけで、休暇の付与を義務づけるものではありません。

あわせて、2022年4月から「くるみんプラス」などの認定制度があります。厚生労働省が示す不妊治療に関する認定基準は次のとおりです。

要件内容
制度の整備(1)不妊治療のための休暇制度(年次有給休暇を除く。多目的休暇や利用目的を限定しない休暇を含む)
制度の整備(2)半日または時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークのうちいずれか
方針の周知両立推進の方針と措置の内容を労働者に周知
理解促進研修などの取組を実施
相談体制両立支援担当者を選任し、労働者に周知

勤め先がこの認定を受けているかどうかは、会社の採用情報や人事の案内で確認できる場合があります。認定を受けていない会社でも、同じような制度を独自に設けていることがあります。

会社が受け取れる助成金は現行のコースがある(2026年10月時点)

以前は「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」という名称でしたが、現在は「不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース」として実施されています。厚生労働省の両立支援等助成金のご案内ページには、2026(令和8)年度の支給要領(令和8年4月1日時点)が掲載されています。

不妊治療の区分について、支給要領は次のように定めています。

  • 対象は中小企業事業主です。
  • 不妊治療のための休暇制度、所定外労働制限、時差出勤、短時間勤務、フレックスタイム制、在宅勤務等の制度を、労働協約または就業規則に規定します。制度利用の手続や賃金の取扱いも規定する必要があります。
  • 不妊治療のための両立支援担当者を選任します。
  • 対象労働者が制度を合計5日(回)以上利用し、利用期間は利用開始日から1年以内です。時間単位の利用も数えられますが、5日間に分けて利用する必要があります。
  • 支給額は30万円で、1中小企業事業主につき1回限りです。過去に旧コース(不妊治療両立支援コース)を受給した事業主は受給できません。
  • 申請は、制度の利用が合計5日を経過する日の翌日から2か月以内に、管轄の労働局へ行います。

同じ要領には、月経に起因する症状への対応と更年期における心身の不調への対応の区分もあり、それぞれ別の区分として扱われています。

この助成金は事業主に支給されるもので、労働者本人が受け取るものではありません。要件や金額は年度ごとに改正される可能性があるため、会社が検討する場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で最新の内容を確認してください。

職場に伝えるときに使えるもの(連絡カードとハンドブック)

厚生労働省は、不妊治療を職場にどう伝えるかの補助として、次の資料を公開しています。

  • 不妊治療連絡カード:従業員が不妊治療中であることを会社に伝えるとき、または会社独自の制度を利用するときに使うツールです。Word・PDF形式のカードと、連絡事項欄の記載例が用意されています。
  • 不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック:本人、職場の上司、同僚向けの資料で、不妊治療の内容や職場での配慮のポイントを紹介しています。
  • 職場づくりのためのマニュアル:事業主・人事部門向けの資料です。

誰に、どこまで伝えるかは本人が決めることです。会社の制度を使うには申し出が必要になるため、申出の窓口(直属の上司か人事か)と、診断書や証明書類の要否を、先に就業規則で確かめておくと進めやすくなります。

治療の費用や保険適用の条件は、不妊治療の保険適用で整理しています。

会社に制度がないときの確認の順番

就業規則に不妊治療の休暇が見当たらない場合は、次の順で確認すると整理しやすくなります。

  1. 年次有給休暇の残日数と、時間単位・半日単位で取れるかどうか
  2. 失効した年次有給休暇を積み立てて使える制度や、多目的に使える特別休暇があるか
  3. 時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークなど、休暇以外の制度があるか
  4. 人事の窓口や、会社の両立支援担当者への相談

助成金の支給要領では、失効した年次有給休暇を不妊治療のために利用できる制度や、不妊治療を含む多様な目的で使える休暇も、休暇制度として扱われています。会社に専用の休暇がなくても、こうした制度が使える場合があります。

制度の有無や運用で困ったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が相談窓口になります。

よくある質問

不妊治療のための休暇は法律で決まっていますか。
確認した範囲では、会社に不妊治療休暇の付与を義務づける条文は見当たりません。厚生労働省の資料では、事業主が就業規則等に定めて導入する制度として扱われています。有無や日数、有給か無給かは勤め先の就業規則で決まります。
不妊治療の通院に年次有給休暇を時間単位で使えますか。
労働基準法第39条第4項は、労使協定を結んだ場合に、年5日以内で時間単位の年次有給休暇を与えられると定めています。協定がない会社では当然には使えないため、就業規則で確認してください。
不妊治療の助成金は労働者本人がもらえますか。
両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)は、制度を整えて労働者に利用させた中小企業事業主に支給されるもので、労働者本人に支給されるものではありません。2026年度の支給要領での不妊治療の区分の支給額は30万円(1事業主につき1回限り)です。
不妊治療連絡カードとは何ですか。
従業員が不妊治療中であることを会社に伝えるとき、または会社独自の制度を利用するときに使うツールで、厚生労働省がWord・PDF形式と記載例を公開しています。使うかどうかは本人が決めます。
会社に不妊治療の制度がない場合、どこに相談できますか。
まず社内の人事窓口や両立支援担当者に相談します。制度の運用や助成金について知りたい場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が窓口です。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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