胎児認知とは|母の承諾が必要、届出先は母の本籍地(民法783条・戸籍法61条)

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

胎児認知は、民法第783条第1項にもとづき、父が生まれる前の子を認知する手続きです。母の承諾が必要で、届出先は母の本籍地です(戸籍法第61条)。出生後の認知との違いを比較表にまとめ、日本人父と外国人母の子の国籍の扱い、出生届との関係、2024年4月施行の民法改正で確認できた条文も整理しました。

胎児認知は、生まれる前に父子関係を届け出る手続き

認知は、婚姻していない父母の間に生まれた子(嫡出でない子)について、父子関係を法律上のものにする手続きです。民法第779条は「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」と定めています。方式は第781条第1項で「戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする」とされ、届出が必要です。

このうち、まだ生まれていない子を対象にするのが胎児認知です。根拠は民法第783条第1項で、「父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない」と書かれています。認知できるのは父で、母の承諾が要件になっています。

認知の効力は、第784条により「出生の時にさかのぼって」生じます(ただし第三者が既に取得した権利は害せません)。また第785条は、認知をした父又は母はその認知を取り消すことができないと定めています。

胎児認知の届出先は、母の本籍地(戸籍法第61条)

戸籍法第61条は、胎内に在る子を認知する場合について、次のように定めています。

  • 届書に、胎内の子を認知する旨、母の氏名及び本籍を記載する
  • 母の本籍地で届け出る

出生後の認知は、届出の場所の一般原則(戸籍法第25条第1項)により「届出事件の本人の本籍地又は届出人の所在地」で届け出ます。胎児認知だけは、届出人(父)の所在地では受け付けられず、母の本籍地の市区町村に限られます。母の本籍地が遠方の場合は、郵送で届出ができるかを含め、その市区町村の戸籍窓口に確認してください。

母の承諾の示し方は、市区町村の案内で確認できます。大阪市の案内では、胎児認知の届出書類に胎児の母の承諾書が挙げられています。届書の「その他」欄に承諾の旨を記載する方法などは自治体によって説明が異なるため、届出先の窓口で書式を確かめるのが確実です。

胎児認知と出生後の認知の違い(比較表)

条文と法務省・市区町村の案内で確認できた範囲を表にまとめます。

胎児認知出生後の認知
根拠民法第783条第1項民法第779条・第781条
届出の時期子の出生前(妊娠中)子の出生後
届出先母の本籍地のみ(戸籍法第61条)本人の本籍地又は届出人の所在地(戸籍法第25条第1項)
母の承諾必要(民法第783条第1項)母の承諾を求める規定は、確認した範囲では見当たらない。成年の子は本人の承諾が必要(第782条)
効力の発生出生の時にさかのぼる(第784条)。戸籍への記載は出生届の後出生の時にさかのぼる(第784条)
日本人父と外国人母の子の国籍出生により日本国籍を取得(法務省国籍Q&A)出生では取得せず、国籍法第3条の届出で取得

届出そのものに期限を設けた規定は、確認した範囲では見当たりません。一方、胎児認知は子が生まれる前にしかできない手続きです。

国籍への影響は、届出の時期で扱いが分かれる

国籍は事実として次のとおり整理されています。個別のケースでの判断は、法務局の国籍相談窓口に確認してください。

国籍法第2条第1号は、出生の時に父又は母が日本国民であるとき、子は日本国民とすると定めています。法務省の国籍Q&Aでは、ここでいう父又は母を「子の出生の時に、子と法律上の親子関係がある父又は母」と説明しています。そのうえで、婚姻していない日本人父と外国人母の子について、母の胎内にいる間に父から認知された場合(胎児認知)は出生によって日本国籍を取得する、出生後の認知では出生の時に法律上の親子関係があったことにならないため出生によっては取得しない、としています。

出生後に認知された場合は、国籍法第3条第1項により、一定の要件を満たせば法務大臣への届出で日本国籍を取得できます。法務省の手続案内では、対象は出生後に日本人父から認知された18歳未満の者で、令和4年(2022年)4月1日に提出時期が20歳未満から18歳未満に引き下げられたとされています。届出をした人は、届出の時に日本国籍を取得します(同条第2項)。

胎児認知のあとの出生届

胎児認知の届出が受理されても、子が生まれて出生届が出されるまでは、戸籍への記載はありません(前橋市の案内)。嫡出でない子の出生届は、戸籍法第52条第2項により母が届け出るものとされ、期限は生まれた日から14日以内です(戸籍法第49条第1項、国外で生まれたときは3か月以内)。

胎児認知をした場合の出生届の書き方について、法務省の資料で具体的に説明した箇所は、確認した範囲では見当たりませんでした。法務省の出生届の案内には「嫡出でない子の場合」の記載要領があり、書き方に不明な点は届出先の市区町村に問い合わせるよう書かれています。出生後の手続き全体は出産後にやることリスト、妊娠中の届出は妊娠届と母子健康手帳で整理しています。

2024年4月施行の民法改正で、認知に関わる点

「民法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第102号)の嫡出推定制度の見直し等に関する規定は、法務省によると令和6年4月1日から施行されています。認知に関して、現在の条文で確認できるのは次の点です。

  • 第783条第2項:胎内の子が出生した場合に、第772条(嫡出の推定)によりその子の父が定められるときは、胎児認知は効力を生じない
  • 第786条第1項:認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えは、子又はその法定代理人、認知をした者、子の母が、それぞれ定められた時から7年以内に提起できる。胎児認知の場合の起算は「子の出生の時」
  • 第786条第2項:子が認知した者と認知後に継続して同居した期間が3年を下回るときは、21歳に達するまで提起できる(ただし書あり)

法務省は、この改正で事実に反する認知の効力を争うことができる期間の規定を設けた、と説明しています。施行前に認知された場合の扱いなどは附則の確認が必要なため、この記事では触れません。

養育費・親権・相続などは、専門の相談先へ

認知が成立したあとの養育費、親権、相続などの具体的な扱いは、家庭ごとに異なります。この記事では判断できません。届出の書き方や本籍地の確認は市区町村の戸籍窓口、国籍については法務局・地方法務局、法律上の判断は弁護士(法テラスなど)にご相談ください。

よくある質問

胎児認知はいつまでにすればよいですか?
胎児認知は、子が生まれる前にしかできない手続きです。届出の期限を定めた規定は、確認した範囲では見当たりません。出生後は胎児認知ではなく、出生後の認知の届出になります。
胎児認知の届出はどこにしますか?
母の本籍地の市区町村です(戸籍法第61条)。父の住所地や、母の現住所の市区町村では受け付けられません。届書の書き方や郵送の可否は、母の本籍地の戸籍窓口に確認してください。
胎児認知に母の承諾は必要ですか?
必要です。民法第783条第1項に「母の承諾を得なければならない」と定められています。承諾書の様式は市区町村により案内が異なるため、届出先で確認してください。
日本人父と外国人母の子は、胎児認知で日本国籍になりますか?
法務省の国籍Q&Aでは、母の胎内にいる間に日本人父から認知された場合は、出生によって日本国籍を取得するとされています。個別の事情は、法務局の国籍相談窓口で確認してください。
出生後に認知した場合、国籍はどうなりますか?
出生によっては日本国籍を取得しません。国籍法第3条の要件を満たす18歳未満の子は、法務大臣への届出によって、届出の時に日本国籍を取得できます。
胎児認知のあと、出生届は誰が出しますか?
嫡出でない子の出生届は母が届け出ると、戸籍法第52条第2項に定められています。期限は生まれた日から14日以内です。書き方は届出先の市区町村に確認してください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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