出産で使えるお金の制度一覧|もらえるもの・戻るもの・免除されるもの

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

出産に関わるお金の制度は複数あり、申請先も時期もばらばらです。健康保険から受けるもの、雇用保険から受けるもの、税金が戻るもの、支払いが免除されるものが混在しているため、全体像がつかみにくくなっています。この記事では「もらう・戻る・免除される」の3つに分けて整理し、申請先と時期の目安を一覧にしました。制度の詳細は変わることがあるため、必ず公式情報をご確認ください。

まず全体像:3種類に分けると整理できる

出産に関わるお金の制度は、次の3つに分けると理解しやすくなります。

種類主な制度どこから
もらう出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付、児童手当健康保険・雇用保険・自治体
戻る高額療養費、医療費控除、妊婦健診の払い戻し健康保険・税務署・自治体
免除される産前産後期間の社会保険料免除、国民年金保険料の免除勤務先・年金事務所

ここが混乱しやすいのは、窓口がバラバラだからです。自治体に行けばすべて済むわけではなく、健康保険、勤務先、税務署、年金事務所と分かれています。以下でそれぞれを見ていきます。

もらう:一時金・手当金・給付金

出産育児一時金(原則50万円)
加入している健康保険から支給されます。多くは直接支払制度で施設へ直接支払われ、窓口では差額のみを負担します。費用が50万円を下回った場合は差額を申請して受け取れます。詳しくは出産育児一時金の使い方をご覧ください。

出産手当金
勤務先の健康保険に加入している方が産前産後休業を取得し、その間に給与が支払われない場合に支給されます。国民健康保険には原則としてこの制度がないため、自営業の方は対象外になるのが一般的です。申請は勤務先を通じて行います。

育児休業給付
雇用保険から支給されます。育児休業を取得し、一定の被保険者期間などの条件を満たす場合が対象です。申請は原則として勤務先を通じて行います。

児童手当
出生後、お住まいの市区町村へ申請します。申請が遅れるとさかのぼって受け取れないことがあるため、出生届と一緒に手続きするのが確実です。

戻る:高額療養費・医療費控除・健診の払い戻し

高額療養費
保険診療の自己負担が上限を超えた場合に、超過分が払い戻されます。正常な経過の出産は保険の対象外ですが、帝王切開など医学的な処置が行われた場合は対象です。事前に限度額適用認定証を用意しておけば、窓口での支払いを上限額までに抑えられます(帝王切開の費用)。

医療費控除
1年間に支払った医療費が一定額を超える場合、確定申告で税の還付を受けられる可能性があります。妊婦健診や分娩の費用も対象になりえますが、出産育児一時金や保険金で補填された分は差し引いて計算します。何が対象になるかは個別に判断が必要なため、国税庁の情報を確認するか税務署にご相談ください。

妊婦健診の払い戻し
里帰り出産などで自治体の補助券が使えず自費で支払った場合、後から払い戻しを受けられる制度があります。申請期限と必要書類は自治体ごとに異なります(妊婦健診の費用と補助券)。

免除される:社会保険料

意外と知られていないのが、保険料の免除です。支給されるお金ではありませんが、手取りへの影響は小さくありません。

産前産後休業・育児休業中の社会保険料免除
会社員の場合、産前産後休業および育児休業の期間中は、健康保険と厚生年金の保険料が本人負担・事業主負担ともに免除される仕組みがあります。免除された期間も年金の計算上は保険料を納めた扱いになります。手続きは勤務先を通じて行います。

国民年金保険料の産前産後期間の免除
国民年金の第1号被保険者(自営業など)にも、出産前後の一定期間について保険料が免除される制度があります。申請が必要で、お住まいの市区町村の窓口で手続きします。

いずれも自動では適用されない点に注意してください。勤務先または市区町村への届出が必要です。

申請の時期の目安

時期がずれると受け取り損ねるものがあるため、大まかな順番を押さえておくと安心です。

時期すること
妊娠がわかったら妊娠届を提出し、母子健康手帳と健診の補助券を受け取る
妊娠中(産休前)勤務先に出産予定日を伝え、出産手当金・育児休業給付・社会保険料免除の手続きを確認する
入院前直接支払制度の書類を提出。帝王切開が予定されている場合は限度額適用認定証を用意
出生後すぐ出生届、児童手当、健康保険への加入手続き、乳幼児医療費助成
退院後出産育児一時金の差額申請(該当する場合)、妊婦健診の払い戻し申請
翌年の確定申告医療費控除(該当する場合)

それぞれに期限があります。出産育児一時金は出産日の翌日から2年、医療費控除は5年以内であれば申告できるのが一般的です。

今後の制度変更について

2026年5月29日、正常分娩を公的医療保険の給付対象とする改正健康保険法が成立しました。施行は公布から2年以内とされています。

これにより出産費用の支払いの形と、出産育児一時金との関係が整理されることになります。現時点で最終的な設計は決まっていませんが、この記事で整理した仕組みのうち、出産育児一時金に関する部分は今後変わる可能性があります。

制度の切り替わり時期に出産を迎える方は、厚生労働省の公表と、加入している健康保険・勤務先からの案内を確認してください。詳しくは正常分娩の保険適用で整理しています。

よくある質問

自営業ですが、出産手当金はもらえますか?
国民健康保険には原則として出産手当金の制度がないため、対象外になるのが一般的です。一部の国民健康保険組合では独自に支給している場合があります。加入先にご確認ください。出産育児一時金は国民健康保険でも支給されます。
パートやアルバイトでも育児休業給付は受けられますか?
雇用保険に加入していて、被保険者期間などの条件を満たせば対象になりえます。勤務先またはハローワークにご確認ください。
児童手当の申請が遅れるとどうなりますか?
原則として申請した月の翌月分からの支給になり、さかのぼって受け取れないのが一般的です。出生届と一緒に手続きすることをおすすめします。
医療費控除は誰の名義で申告しますか?
生計を一にする家族の医療費は合算して申告できます。一般的には所得が多い方が申告すると還付額が大きくなりますが、状況によります。詳しくは国税庁の情報をご確認ください。
制度が多すぎて漏れが心配です。
妊娠届を出すときに市区町村の窓口で、産休前に勤務先の担当者に、それぞれ「該当する制度を教えてください」と確認するのが確実です。窓口ごとに扱う制度が違うため、両方に聞いておくと漏れを防げます。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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