産婦人科の転院手順|まず転院先に電話。紹介状・補助券14回分・分娩予約金の実務

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

産婦人科の転院は、里帰りを含めると全産婦の約24.5%が妊娠後期に分娩施設を移っているという算出があります(当サイトの調査まとめ)。この記事では、引っ越し・分娩休止・通いづらさなど里帰り以外の理由で転院するときの手順を、転院先の受け入れ確認、紹介状、補助券、分娩予約金の順に整理します。

転院は珍しいことではない

産婦人科の転院、つまり妊娠の途中で通う施設や分娩施設を替えることは、実はよくあります。厚生労働省の事業として行われた大規模調査(2024年3月・回答16,118人)では、約5割が出産前後に里帰りをしています。里帰りを中心に、全産婦の約24.5%が妊娠後期に分娩施設を移っているという算出もあります(当サイトの調査まとめ)。

里帰り以外にも、転院の理由はさまざまです。

  • 引っ越し
  • 通っていた施設の分娩休止(分娩取扱施設は直近1年で100施設減)
  • 通ってみると距離や待ち時間の負担が大きかった
  • 無痛分娩など、希望する条件への対応

この記事では里帰り以外の転院の実務を整理します。里帰りの手順は里帰り出産の準備と手続きをご覧ください。

手順の全体像:転院先の受け入れ確認が先

転院の手順そのものはシンプルですが、順序が大切です。

順序すること
1転院先の候補に電話し、受け入れ可否を確認(分娩予約の空き、受け入れの条件)
2現在の施設に転院の意向を伝え、紹介状を依頼
3補助券など自治体側の手続きを確認(引っ越しを伴う場合)
4分娩予約金など、現在の施設との精算を確認
5紹介状を持って転院先を受診

先に現在の施設へ相談しても構いませんが、転院先の受け入れが決まらないと他の手続きが進まないため、受け入れ確認を最初に置くのが実務的です。転院先探しには全国の産婦人科を都道府県から探すページが使えます。

紹介状(診療情報提供書)と健診記録

転院の際は、紹介状(診療情報提供書)を現在の施設に発行してもらうのが一般的です。これまでの健診の経過や検査の結果を次の施設へ引き継ぐ書類で、転院先の多くが持参を求めます。

  • 発行は現在の施設の窓口に依頼します。日数がかかることがあるため早めに動きます
  • 発行には費用がかかります(金額は下記)
  • 母子健康手帳の健診記録も引き継ぎ情報になるため、転院先の初診に必ず持参します

紹介状の費用は、保険診療として扱われる場合、診療報酬で金額が決まっています。厚生労働省の医科診療報酬点数表では「診療情報提供料(Ⅰ)」が250点で、1点10円なので2,500円、3割負担なら窓口で750円です。ただし妊婦健診そのものは病気の治療ではなく公的医療保険の対象外のため、施設によっては保険外の文書料として別の金額を設定していることがあります。実際の金額は依頼するときに窓口で確認してください。

紹介状に何を記載するかは施設同士で必要な内容が決まっているため、本人が指定する必要はありません。転院先から「◯◯の結果があれば持ってきてください」と案内された場合は、それを現在の施設に伝えれば足ります。

補助券(受診票)の扱い

妊婦健診の公費負担は、こども家庭庁の案内で「妊婦1人につき出産までに14回程度」とされており、補助券(受診票)を交付するのは自治体です。交付元が自治体である以上、扱いは転院のパターンによって変わります。

パターン補助券の扱い
同じ自治体内での転院そのまま使えるのが一般的
引っ越し(自治体が変わる)転入先の自治体で新しい受診票に差し替え
交付元の自治体外の施設で受診使えない場合、後日償還払い(払い戻し)を申請できることがあります

厚労省事業の調査では、里帰り先で受診券を使えなかった人の8割近くが償還払いを申請しています。窓口は自治体の母子保健担当です。引っ越し時の手続きの詳細は妊婦健診の費用と補助券で整理しています。

分娩予約金・キャンセル料の確認

分娩予約の際に予約金を支払っている場合、返金の可否と条件は施設ごとの規約で決まっています。転院を決める前に、次の点を確認しておきましょう。

  • 予約時の案内や申込書に、返金条件の記載があるか
  • 返金される場合の時期と方法
  • キャンセル料や事務手数料の有無

施設都合(分娩休止など)による転院の場合の扱いは、施設からの案内で確認してください。また、転院先でも新たに予約金が必要になることがあります。金額と支払い時期をあわせて聞いておくと、資金の計画が立てやすくなります。

タイミングの実務

「妊娠何週までに転院すべきか」という医学的な線引きは、この記事では扱いません。ただし実務の面では、次の構造があります。

  • 分娩予約の枠は順に埋まっていきます。約3分の2の人が妊娠3か月までに予約を済ませており、時期が遅いほど空きは少なくなります
  • 妊娠後期の受け入れに「妊娠◯週までに一度受診を」といった条件を設けている施設があります。条件は施設ごとに違うため、電話での確認が必須です
  • 紹介状の発行や自治体の手続きにも日数がかかります

つまり、転院を考え始めた時点で転院先の候補に電話するのが、選択肢を最も多く残す動き方です。転院先を何で比べるかは産婦人科・産院の選び方に整理しています。分娩休止が理由の場合の段取りは通っていた産院が分娩をやめたらをご覧ください。

よくある質問

産婦人科を転院したいとき、最初に何をすればよいですか?
転院先の候補に電話して、受け入れ可否と分娩予約の空きを確認してください。ここが決まらないと紹介状も自治体の手続きも進められないためです。現在の施設への相談は、そのあとで問題ありません。
転院の理由は、今の施設にどう伝えればよいですか?
率直に伝えて問題ありません。引っ越しや通いづらさは一般的な転院理由で、施設側も日常的に対応しています。詳しく話しにくい場合も、「転院を考えている」と伝えれば紹介状の相談は進められます。
紹介状なしで転院できますか?
転院先の方針によります。妊娠中の転院では、健診経過の引き継ぎのために紹介状の持参を求める施設が多数です。まず転院先に必要書類を確認し、そのうえで現在の施設に発行を依頼してください。
使わなかった補助券はどうすればよいですか?
自治体によって返却や差し替えの扱いが異なります。引っ越しを伴う場合は転入先の自治体窓口で、そうでない場合は交付元の窓口でご確認ください。
分娩予約金は戻ってきますか?
施設の規約によります。申込時の書類を確認のうえ、施設にお尋ねください。分娩休止など施設都合の場合は、施設からの案内で扱いが示されるのが一般的です。
転院はいつまでにすればよいですか?
受け入れの条件が施設ごとに異なるため、一律の期限はありません。妊娠後期の受け入れに条件を設けている施設もあるため、転院を考え始めた段階で転院先の候補に電話し、受け入れ可能な時期と条件を確認するのが確実です。
紹介状の費用はいくらかかりますか?
保険診療として扱われる場合は診療報酬で決まっており、診療情報提供料(Ⅰ)が250点、つまり2,500円で、3割負担なら窓口で750円です。ただし妊婦健診は公的医療保険の対象外のため、施設によっては保険外の文書料を設定していることがあります。依頼時に窓口でご確認ください。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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