通っていた産院が分娩をやめたら|転院のときにすること

執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部

分娩を取り扱う施設は2006年の3,098施設から2025年には1,856施設へと約40%減り、直近1年でも約100施設が分娩の取り扱いをやめています。通っていた施設が分娩を休止することは、誰にでも起こりうることです。この記事では、そうなった場合にいつまでに何をすればよいか、紹介状と記録の引き継ぎ、費用や予約金の扱いを整理します。

珍しいことではない

分娩を取り扱う施設は、長期にわたって減り続けています。

分娩取扱施設数
2006年3,098施設
2025年1,856施設

約20年で40%減っており、直近1年でも約100施設が分娩の取り扱いをやめています。

背景には、産科医の確保の難しさ、施設の後継者の問題、経営環境の変化などがあります。施設の姿勢の問題ではなく、構造的な事情であることがほとんどです。

つまり、通っていた施設が分娩をやめるというのは、誰にでも起こりうることです。まずそのことを知っておいてください。当サイトでは出産環境白書2026で全国の分娩施設の構成を集計しています。

まずやること:現在の施設に確認する

分娩の休止を知らされたら、その場で次の点を確認してください。後から電話で聞き直すより、その場で聞くほうが確実です。

  1. いつから分娩を扱わなくなるのか — 予定日との関係で、間に合うかどうかが決まります
  2. 紹介先の候補はどこか — 多くの施設が連携先を案内してくれます
  3. 紹介状はいつ書いてもらえるか
  4. 健診はいつまでこちらで受けられるか — 分娩はやめても外来は続ける施設が多くあります
  5. 分娩予約金を支払っている場合、返金はどうなるか

とくに1と5は必ず確認してください。予定日より前に休止する場合は転院が必要ですし、予約金の扱いは施設によって異なります。

転院先を探すときの順序

紹介先を提示された場合でも、それが唯一の選択肢とは限りません。次の順で考えると整理しやすくなります。

  1. 紹介先を確認する — 距離、対応している分娩の方法、受け入れ可能な時期
  2. 他の候補も見る全国の産婦人科を都道府県から探すページから、同じ市区町村や近隣の分娩取扱施設を確認できます
  3. 受け入れの可否を電話で確認する — 妊娠週数によっては新規の受け入れを締め切っている施設があります
  4. 希望する条件を確認する — 無痛分娩、立ち会い、母子同室など

妊娠週数が進んでいる場合は、選べる範囲が狭くなります。受け入れ可能かどうかを先に確認し、そのうえで条件を見るという順序が現実的です。

地域に分娩施設が少ない場合の考え方は分娩施設が近くにない地域の産院選びをご覧ください。

記録の引き継ぎ

転院にあたって重要なのが、これまでの健診の記録です。

  • 紹介状(診療情報提供書) — 妊娠の経過、検査の結果、注意点がまとめられています。転院先に必ず持参してください
  • 母子健康手帳 — 健診の記録が記載されています
  • 検査結果の写し — 血液検査や超音波の記録をもらえる場合があります

紹介状の作成には文書料がかかるのが一般的です。施設の都合による転院の場合、扱いが異なることもあるため、確認してみてください。

また、転院先での初診の際に再度検査が必要になる場合があります。これは記録が不十分だからではなく、転院先の方針によるものです。費用が発生する場合があるので、初診の予約時に確認しておくと見通しが立ちます。

費用と手続きへの影響

転院に伴って、いくつかの手続きに影響が出ることがあります。

項目確認すること
分娩予約金返金されるか、いつ返金されるか
出産費用転院先の費用は前の施設と異なります。事前に確認を
直接支払制度転院先で改めて手続きが必要です
健診の補助券転院先でも使えるか(同じ自治体内なら通常は使えます)
助成制度無痛分娩の助成などを申請予定の場合、対象施設の条件を確認

出産費用は施設によって異なり、都道府県の平均でも1.6倍の差があります(出産費用はなぜ地域で違うのか)。転院によって費用が変わる可能性があることは、あらかじめ見込んでおいてください。

出産育児一時金の直接支払制度は、実際に分娩する施設で手続きします(出産育児一時金の使い方)。

第2子以降を考えている場合

いま出産を控えていない方にも関係する話があります。今ある施設が、数年後も分娩を扱っているとは限りません。

毎年約100施設が分娩の取り扱いをやめている状況では、第1子のときに通った施設が第2子のときには分娩を扱っていない、ということが実際に起こります。

第2子以降を考えている場合は、妊娠がわかった段階で、前回と同じ前提が成り立つかを確認することをおすすめします。「前に通っていたから大丈夫」と考えて連絡が遅れると、選択肢が狭まります。

各地域の分娩取扱施設の状況は全国の産婦人科を都道府県から探すページから確認できます。掲載は公的データにもとづくもので、当サイトは全件を無償で掲載しています。最新の分娩の取り扱い状況は、必ず各施設へ直接ご確認ください。

よくある質問

分娩をやめた施設では健診も受けられなくなりますか?
分娩の取り扱いをやめても、外来(婦人科・産科の健診)は続ける施設が多くあります。いつまで健診を受けられるかを確認してください。
分娩予約金は返してもらえますか?
施設によって扱いが異なります。施設の都合による休止の場合は返金されることが多いものの、規定を確認してください。
妊娠後期でも転院先は見つかりますか?
週数が進むほど選択肢は狭くなりますが、受け入れている施設はあります。まず現在の施設に紹介先を確認し、並行して近隣の施設に受け入れ可否を問い合わせてください。
紹介状の費用は誰が負担しますか?
通常は患者の負担ですが、施設の都合による転院では扱いが異なることもあります。確認してみてください。
分娩をやめる施設が多いのはなぜですか?
産科医の確保の難しさ、後継者の問題、経営環境の変化などが背景にあります。個々の施設の事情はさまざまで、当サイトが理由を特定できるものではありません。

本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。

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