産後ケア事業の使い方|自治体の制度と申し込みの流れ
産後ケア事業は市区町村が実施する公的な制度で、宿泊型・日帰り型・訪問型があります。何ができるか、誰が使えるか、費用と申し込みの流れ、産後に探す負担を減らすために妊娠中にやっておくことを整理しました。
執筆: 産婦人科と小児科の教科書 編集部
「こんにちは赤ちゃん事業」の正式名称は乳児家庭全戸訪問事業です。児童福祉法第6条の3第4項は、この事業を次のように定義しています。
一の市町村の区域内における原則として全ての乳児のいる家庭を訪問することにより、内閣府令で定めるところにより、子育てに関する情報の提供並びに乳児及びその保護者の心身の状況及び養育環境の把握を行うほか、養育についての相談に応じ、助言その他の援助を行う事業
条文にあるとおり、対象は「原則として全ての乳児のいる家庭」です。特定の困りごとがある家庭に限った事業ではありません。
同じ条の第5項には、養育支援訪問事業という別の事業が定義されています。乳児家庭全戸訪問事業などで把握した、養育の支援が特に必要な児童や妊婦を対象に、居宅で相談・指導・助言を行う事業です。まず全戸を訪問して状況を把握し、必要な家庭にはこの事業で続けて支援するという条文上のつながりになっています。
実施の細目は、こども家庭庁の「乳児家庭全戸訪問事業ガイドライン」に定められています。対象は原則として生後4か月を迎えるまでの乳児のいる家庭で、この期間に1回訪問することが原則です。
訪問者について、ガイドラインは次のように定めています。
訪問者については、保健師、助産師、看護師の他、保育士、母子保健推進員、愛育班員、児童委員、母親クラブ、子育て経験者等から幅広く人材を発掘し、訪問者として登用して差し支えない。
つまり保健師・助産師・看護師に限らず、研修を受けた地域の担い手が訪問することがある制度です。訪問者は、訪問に先立って目的や内容についての研修を受けることになっています。
訪問で行う内容は、ガイドラインで次の4項目に整理されています。
こんにちは赤ちゃん事業とよく似た制度に、母子保健法にもとづく訪問指導(新生児訪問)があります。第11条は新生児、第19条は未熟児について、市町村長が訪問指導を行わせるものと定めています。
| 条文 | 対象 | 実施主体 |
|---|---|---|
| 母子保健法第11条 | 新生児(育児上必要があると認める場合) | 市町村長 |
| 母子保健法第19条 | 未熟児(養育上必要があると認める場合) | 市町村長 |
| 児童福祉法第6条の3第4項 | 原則すべての乳児のいる家庭 | 市町村 |
ガイドラインは、この2つの事業について「法的な位置づけや第一義的な目的は異なるものの、いずれも新生児や乳児がいる家庭へのサポートを行うものであり、密接な関係にある」としています。そのうえで、母子保健法にもとづく新生児訪問等を実施している市町村の判断により、これらの訪問指導とあわせて本事業を実施することとして差し支えないと定めています。児童福祉法第21条の10の2第2項も、市町村が母子保健法第10条・第11条・第19条の指導にあわせて乳児家庭全戸訪問事業を行うことができると定めています。
こども家庭庁の調査(2019年4月1日から2020年3月31日までの実施分)では、本事業を実施した1,725市町村のうち1,323市町村(76.7%)が新生児訪問指導とあわせて実施したと回答しています。1回の訪問が両方の役割を兼ねている自治体が多いということです。どちらの訪問として来ているかが分かりにくいときは、案内文書か窓口で確認してください。
訪問のきっかけになるのは、多くの自治体で出生連絡票(出生通知票)です。母子健康手帳の交付時に同封されており、出産後に自治体の窓口へ郵送または持参で提出する仕組みをとる自治体が多くあります。
ガイドラインも、母子健康手帳交付や出生届受理などの機会を活用して事業を周知することを求めています。出生連絡票を提出すると、その情報にもとづいて訪問の日程調整が始まる、という流れです。
出生連絡票の名称や書式、提出方法(郵送・窓口・オンライン申請など)は自治体によって異なります。母子健康手帳と一緒に届く案内を確認し、早めに提出しておくと訪問の調整が進みやすくなります。出生届など産後の手続きと合わせて済ませておくと管理しやすくなります。
ガイドラインは、訪問について事前に同意を得ることを前提にしています。事業の周知にあたっては「事前に訪問日時の同意を得るよう調整する等、対象家庭や地域の実情に応じて訪問を受けやすい環境づくりを進める」と定められており、無条件に立ち入るものではありません。
同意が得られない場合の扱いについても、ガイドラインに記載があります。
訪問の同意が得られず、改めて訪問の趣旨を説明し本事業の実施の働きかけを行ったにもかかわらず同意が得られない場合(は、訪問の対象としないことで差し支えない)
ただし同じ箇所で、この場合の状況自体が、支援が特に必要と認められる家庭に準ずる家庭として位置づけられるとも定めています。市町村はケース対応会議で、その後の対応が必要かどうかを検討する仕組みです。訪問を一度断った後の具体的な対応は、ガイドラインでは市町村の判断とされており、当サイトで確認できた範囲では一律の手順は示されていません。事業の趣旨や進め方を確認したい場合は、案内が届いた市町村の母子保健担当窓口にご相談ください。
ガイドラインは、子の入院や長期の里帰り出産などにより、生後4か月を迎えるまでに当該市町村の住居に子がいないと見込まれる場合も、訪問の対象としないことで差し支えないとしています。この場合も、状況自体が支援の必要性を示す可能性があるものとして扱われます。
里帰り出産などで日程の調整が必要なときは、住民票のある市町村と、里帰り先の市町村の両方に確認するのが基本です。住民票のある市町村には訪問の時期をずらせるか、里帰り先の市町村には訪問(または同等の事業)を代わりに受けられるかを、それぞれの母子保健担当窓口(保健センターなど)に聞いておくと、生後4か月という期間に対応しやすくなります。
こんにちは赤ちゃん事業は、母子保健法第22条にもとづくこども家庭センターが行う相談支援などとも連携して運用されます。訪問で把握した状況にもとづき、必要な家庭には養育支援訪問事業(児童福祉法第6条の3第5項)による継続的な支援につながる仕組みです。
2024年4月に施行された改正児童福祉法では、要支援児童の保護者などを対象に居宅で家事・養育の援助を行う子育て世帯訪問支援事業が児童福祉法第6条の3に新設されました。こんにちは赤ちゃん事業で把握した家庭が、その後こうした事業につながることもあります。
お母さん自身の休息や相談には、産後ケア事業という別の制度も使えます。出生後の手続き全体は出生届から保険証までの手続きチェックリストで整理しています。訪問時に体調や気持ちで気になることがあれば、その場の保健師・助産師か、かかりつけの医療機関にご相談ください。この記事は制度の説明であり、医学的な判断は行っていません。
本記事は制度・費用・選び方に関する一般的な情報の整理であり、医学的助言ではありません。個別の症状・治療については、かかりつけ医・受診先の医療機関にご相談ください。制度・金額は記事内記載の時点の情報です。
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